熟語・出典から知っておきたい2字熟語

熟語

文字を見ただけではわからないもの

辞書の解説ではちょっと寂しいもの

どう使うのかな?

などなど

 

鷸蚌     殷鑑     膾炙     華胥     完璧     驥尾     杞憂     蛍雪     逆鱗


皓歯     揣摩     守株     出藍     助長     推敲     杜撰     井蛙     蛇足


庭訓     掉尾     白眉     覆轍     望蜀     墨守     矛盾     濫觴

 

 とりあえずこれくらいの言葉は 出典から知っておきたいですね。

 

 

鷸蚌 いっぽう

「鷸蚌の争いは、漁夫の利となる」

 

互いが争そい合っている時、第三者が思わぬ利益を得る。

無益な争いをしていると、第三者に乗ぜられて共倒れになる。小国間の無益な争いへの戒め。

鴫(しぎ)と溝貝(どぶがい)が争っているところを、漁師が両方とも捕えてしまったことから。

使用例;「鷸蚌だな。あいつに漁夫の利をあたえるつもりか。やめとけ。」

 

出典:戦国策(せんごくさく) 中国の雑史。33編。前漢の劉向(りゅうきょう)編。宋の姚宏校本。戦国時代に諸国を遊説した縦横家の建策を国別に分類補正して集録。現行本は宋の曾鞏(そうきょう)が残欠を諸書で補い復元したものによる。

 

紀元前四世紀ごろ、中国は戦国時代で多くの国が対立していた。その中の趙(ちょう)が隣国の燕(えん)に攻め入ろうとしていた。ところで、この国の近くに秦(しん)という強国がある。蘇代(そだい)という人が、攻め入ろうとしている趙の恵文王に対してこう語った。

私が、こちらにまいります時、易(えき)水(すい)という川を通りました。そこでは、蚌(ぼう)(カラス貝の一種)が身を殻(から)から出していた。ところが、鷸(いつ)(シギの一種)がその肉をついばみました。あわてて蚌は、殻を合わせてそのくちばしをはさみ込んでしまった。「きょう、雨が降らず、あすも雨が降らなければ、死んだ蚌ができるぞ」と鷸は言い、「きょう、くちばしを出せずにいて、あすもくちばしを出せなければ、死んだ鷸ができるぞ」と蚌も負けずに言う。ちょうどそこに漁夫(漁師)が通り掛り、鷸と蚌の両方を捕らえてしまった。

今、趙は燕を討とうとしている。燕と趙が戦闘で争い合って、民衆を疲弊させてしまったなら、強い秦がこの「漁夫」のように、趙と燕の両方を我がものとしてしまいましょう。

これを聞いた恵文王は攻め込むのを止めた。

 

 

殷鑑 いんかん

「殷鑑遠からず  夏后の世に在り」

 

殷の手本は、遠い時代に求めなくても、悪政で滅んだ前代の夏王朝がよい戒めである。

戒めとすべき前例は、古い時代や、遠くからさがさなくても、身近にあるものだ。

使用例;「今日はお前が遅刻か。昨日はお前の後輩が遅刻。殷鑑遠からずって言うだろ?」

 

(詩経)

文王曰咨  咨女殷商  ぶんおういわく ああ ああ なんじ いんしょう

人亦有言  顚沛之掲  ひとまたいうあり てんぱいのけいたる

枝葉未有害  本實先撥  しよういまだがいあらざるも もとじつにまずはっす

殷鑒不遠  在夏后之世 いんかんとおからず かこうのよにあり

 

殷最後の王、紂(ちゅう)と言えば悪王の代名詞のようになっている。

史記によれば紂王は鋭い頭脳、達者な弁舌、猛獣を素手で倒すほどの力を持っていた。彼は妲己(だっき)と言う美女に溺れ、酒池肉林の日々をおくり、人民には重税を課し、反対者には徹底的な弾圧と過酷な刑罰を与えた。この話は夏王朝最後の帝、桀王(けつおう)の話にそっくりだ。重臣の一人、西伯昌(せいはくしょう)は紂王にこう諫言した。

「殷鑑遠からず  夏后の世に在り」(「わが殷が鑑(かがみ)とする手本は、何も遠い過去にあるわけではありません。前の夏王朝の桀王の時代にあるではありませんか。」)

西伯昌は桀王の故事を例に取り、主君を諌めたのだが逆に紂王の怒りを買い、追放されてしまった。この西伯昌が後に周の文王と呼ばれるようになる。

 

 

膾炙 かいしゃ

「人口に膾炙する」 人口膾炙・膾炙人口 とも言う。

 

(中国古代の食生活では)膾(なます)と炙(あぶりにく)は、だれの口にもうまく感じられるところから。

また、膾や炙り肉は、人の口にのぼることが多いから。

人々の話題に上ってもてはやされ、広く一般に知れ渡ること。広く誰にでも知られるようになったこと。

使用例;「あの表現もあいつがテレビで使ったから、すっかり膾炙したなあ。」

 

華胥 かしょ

「華胥の夢」、「華胥の国に遊ぶ」とも言う。

 

太古の聖王と知られた黄帝が、夢の中で華胥の国に遊んだという故事から、吉夢または夢のこと。

使用例;「おい君、真っ昼間から華胥の国に遊ぶんじゃないよ。」

 

出典:『列子』黄帝篇 

 黄帝が位について十五年を経た。天下の人々が喜んでじぶんを君主と仰いでいるのを見て、これで一安心と、わが身の保養を思いたち、耳目口鼻の娯みに耽ったが、保養の目的が果たせるどころか、肌は黒ずんで痩せ衰え、喜怒哀楽欲の五情が昏んで迷い乱れた。次の十五年は、天下の治まらないことが心配に思え出し、しきりと聡明を竭くし知力を費やして人民をいたわり慰めることに勤めたが、するとますます肌膚は黒ずみ、五情が昏んで、どうにもならない。そこで黄帝はつくづくと嘆息をついて、 

 「ああ、これはわしのやりかたがずんと間違っておったに相違ない。

  一身の保養につとめても、万民の慰労にはげんでも、 このように心晴れぬとしたら、さてなんとしたものか?」 

 と思いあぐんだ末、こんどは政治むきの仕事など一切ほっぽりだし、りっぱな宮室寝殿から身を退け、近侍の臣も遠ざけ、楽器の鐘も鐘架けから取りはずし、食事の御馳走も数をへらして、大内の片隅にある別館に引きこもって、ひたすら心身を修め整える工夫をこらし、三ヶ月というもの、政治は人まかせにしたままであった。 

 そうしたある日、黄帝は昼寝の夢で華胥氏の国に遊んだ。その国は、中国から何千万里はなれているかわからない。従ってむろん舟や車や徒歩で行きつける所ではなく、ただ精神のみが遊行し得る所である。

さてその華胥氏の国には、君主だの首領だのというものはなく、人民にも嗜欲がない。すべてが自然のままであり、ひとびとは生を楽しむこともなく、死を悪むことも知らないから、若死にする者などは絶えてなく、己に親しみ人を疎んずることを知らないから、愛情の念も湧かず、心に取捨選択することがないから利害損得の念も生じない。愛し憎しむことも畏れいやがることもなく、水に入っても溺れず、火に入っても火傷せず、斬っても鞭うっても傷がつかず、抓っても掻いても痛み痒みを覚えない。なにもない処でも物の上を踏むと同じに歩け、虚空に寝ても寝台の上と同じの安らかさ。雲や霧もその視覚をさえぎらず、雷霆の音もその聴覚を乱さず、物の美醜もその心を揺がさず、険岨な山谷もその歩行を躓かせず、形体を超えた精神の自由に満ちているのである。

 

 黄帝はやがて夢からさめて、はっと悟りを開くところがあった。そこで三人の近侍の臣をお側に召しよせて、夢の次第を語り、こう言った。 

 「わしはこの三月というもの、ひきこもってひたすら身心を修め整え、わが身を養い物を治める工夫をこらしたが、ついぞ良い思案も浮かばなんだ。

  ところが疲れて睡っている間にみた夢がこれじゃ。

  なるほど道の極致というものは、いかにさかしらの思案工夫をこらしたとて、求め得られるものではない。

  わしは無心の夢の中ではじめてその道なるものを、会得したような気もするのじゃが、さてそれをお前たちに口づてにしてやれぬのが歯がゆいわい。」

  それからまた二十八年、無心のうちに道の極致を会得した黄帝の天下は、大いに治まって、あたかも夢の中の華胥氏の国のようになったということである。

  

 

 

完璧 かんぺき

「璧を完うする」

(きずのない玉の意) 欠点がなく、すぐれてよいこと。完全無欠。「―を期する」「―な演技」

漢字源▽中国の戦国時代の趙チョウの藺相如リンショウジョが璧ヘキ(まるい玉)を持って秦シンに使いにいって、その璧を無事に守って持ち帰った故事から。

〔 史記廉頗藺相如列傳〕

趙の惠文王が和氏の璧を手に入れた。これを聞きつけた秦の昭王が璧を15の城(都市)と交換しようと申し出た。断ると戦争を吹っ掛けられるかもしれないが、ただで璧を強奪されても話にならない。ここで宦官の繆賢が「私の客分の藺相如を使者とすればいいのでは」と提案。どんな者かと王が尋ねたので、繆賢は過去の事例を挙げて説明、「勇士であり、智謀も備え、使者に適任かと」と言う。

王は藺相如を召し出して下問する。

 

「秦王が十五城と璧の交換を申し出てきたが、どうしようか?」

相如は「秦は強くて趙は弱いから、断れないでしょう」と答える。

「璧を差し出して城が来なかったらどうする?」と王が再質問すると、

「秦が城を出して璧を趙が出さなければ、趙に問題があります。趙が先に璧を出して秦が城を出さなければ、秦に問題があります。であれば、秦に責を負わせるべきでしょう」

「では、誰を使者とするべきだろうか」

「人がいないようであれば、私が秦に璧を持って行きます。趙に城が与えられたら、璧は秦に留まります。城が与えられないというのであれば、私が璧を完うして趙に帰ります(臣請完璧歸趙)」と相如は答えた。

そこで趙王は藺相如に璧を持たせ、秦へと派遣した。

 

秦王は藺相如を章台と呼ばれる略式の宮殿で引見した。相如が璧を秦王に奉じると、秦王は大喜びで、侍女や近侍の者たちに回し見させた。皆すばらしいと声を揃え秦王を褒め称えた。相如は秦王に城市を交換する気がないのを見て取り、前に進み出て言った。

「璧には傷がございます。大王にお教えしましょう」

秦王が璧を渡すと、相如はこれを持って後ずさりして柱の側に立つと、逆立てた髪の毛で冠が押しあがるほど怒りをあらわにして(怒髪冠を衝く)、秦王に言った。

「大王は、璧を得ようと、使者を立て趙王に書簡を寄せられました。趙王は群臣を集め協議をなさいましたが、皆口々に秦は貪欲で、強国であることを頼み、口先だけの約束で璧を騙し取ろうとしている、代わりの城市は恐らく手に入るまいと申しました。協議では秦に璧を与えるべきではないというのが大勢を占めました。しかしながら、私は庶民の間でさえ互いに騙すことはないのに、まして大国がそのようなことをするはずがない。また、璧一つのことで大国秦の機嫌を損ねてはならない、と主張しました。そこで、趙王は五日間斎戒し、私に璧を奉じさせ、書簡を貴国の宮廷に届けさせたのです。これも、大国の威厳を恐れ、敬意を表すためであります。ところが、私がこちらに参れば、大王は大勢の中で私を引見されました。これは礼に外れた傲慢な態度と言わざるを得ません。璧を手にするや、侍女に渡し、お付の家来となぐさみものになさいました。大王には城市を以って交換なさる気が無いとお見受けいたしましたので、私は璧をまた取り戻したのでございます。大王が私を強いて追い詰められるのであれば、このまま璧と一緒にこの頭を柱に打ち付け共に砕きたいと存じます」

そう言って、相如は柱をにらみつけると璧を持って、そのまま打ち付けようとした。秦王は璧を砕かれてはまずいと思い、あわてて謝ると、役人を呼んで地図を持ってこさせ、十五の城市を指し示して、これより先を趙に与えようと言った。相如は秦王が趙に城市を与えると言っているのは口先だけのことで、実際には得ることはできないだろうと考え、秦王に向かって言った。

「和氏の璧は天下に聞こえた名宝でありますが、趙王は秦を恐れて、献呈しないわけには参りませんでした。

趙王は璧を送るとき五日間斎戒いたしました。大王におかれても、五日間斎戒なされ、宮廷で九賓の礼(きゅうひんのれい)を行われるべきでございます。そうしてはじめて私は璧を奉りましょう」

 秦王は無理に奪うこともできないと判断し、これを受け入れると五日間斎戒し、その間相如を広成の宿舎に泊らせた。相如は、秦王は斎戒をしても約束を破り、城市を与えぬであろうと考え、自分の従者を粗末な服に着がえさせると、璧を隠し持たせ、ひそかに間道を通って趙まで帰らせた。

 秦王は5日間斎戒し、九賓の礼を宮廷で執り行い、趙の使者である藺相如を引見した。相如はその場に着くと秦王に向かって言った。

「秦は繆公から二十人以上の君主が位につかれたが、約束を固く守られた方は誰一人としておられません。私は秦王に欺かれて、趙の誓いに背くことになるのを恐れました。それゆえ、璧はひそかに家臣に趙へ持ち帰らせました。ただでさえ、秦は強く、趙は弱いのです。大王が使者を一人お遣わしになれば、趙はすぐに璧を奉じてはせ参じましょう。今、その強大な秦をもってして、先に15の城市を趙に割譲なされば、どうして、趙は璧を抱え込んで、違約の罪を犯しましょうか。私は大王を欺いた罪で誅殺される覚悟はできております。どうぞ釜ゆでの刑に処してください。大王におかれては大臣方とこれをよくよくご相談ください」

秦王は群臣たちと顔を見合わせて驚いた。側近の中には相如を引き立てて行こうとする者もあったが、秦王は言った。

「今相如を殺しても、璧を得ることはできぬ。しかも、秦と趙のよしみも絶つことになる。むしろ手厚くもてなして、趙に帰らせるほうがよい。趙王とて、璧一つのことで秦を欺きはすまい」

 結局、宮廷で藺相如を謁見すると、儀式を終えて帰国させた。相如が帰国すると、趙王は、諸侯に恥辱を受ける事のなかった賢者であるとして、相如を上大夫に任命した。

 結局秦は趙へ城市を与えることなく、趙も秦へ璧を与えることもなかった。

 

 

驥尾 きび

「驥尾に附す」「蒼蠅(そうよう)驥尾に付して千里を致(いた)す 」

 

「驥」は一日に千里を走るという駿馬(しゆんめ)、駿馬の尾。駿馬の後ろ。また、すぐれた人の後ろ。

「驥尾に附す」て゛優れた人に従えば、事を成し遂げられる。先達を見習って行動すること。自分の行為を謙遜していうことば。 

使用例;「私になんの実績もありません、部長の驥尾に付すことを許していただいてから、こうなれたのです。」

 

「蒼蠅(そうよう)驥尾に付して千里を致(いた)す 」

《「史記」伯夷伝・索隠から》蒼蠅は遠くまで飛べないが、名馬の尾にとまれば千里も行くことができる。

小人物でも賢者や俊傑の庇護によって功名が立てられることのたとえ。自分を、蒼蠅に例え謙遜していうことば。

 

伯夷・叔斉は、古代中国・殷代末期の孤竹国の国王の息子である兄弟。彼らは、先人の教えをよく学び実践していた。周の武王が主君である紂王を討って王となったとき、「それは天の道に反することで許せない!」と嘆いて、山に引きこもってしまう。そんな武王がいる周の国の世話になりたくない、という考えから、周の国でとれた穀物を食べずに、そのまま餓死してしまう。また、孔子の弟子たちの中でも、特に顔淵は優秀であり、日頃から孔子は 「顔淵は私の弟子たちの中でもっとも学問を好みよく努力する」と誉めていた。

 伯夷と叔斉は行いのすばらしい人たちであったし、顔淵も広く学問を学んだ優秀な人だった。ただ、この人たちが有名になって、人々から尊敬されて手本となるような生き方ができたのは、導いてくれる先人に付き従い、先人からよく学んだからだ。

 小さな蠅は、自分ではたいした距離を飛ぶことなどできないが、驥尾、1日に千里も走るという名馬の尾、にとまっていれば、はるか遠いところにも行くことができる。岩陰に隠れているような才能ある優秀な人物が世に出るか出ないかは、本人の努力だけでなく、出会いや時の運にも左右されるのだ。

 

史記 第六十一巻 伯夷列伝第一

君子疾没世而名不称焉。賈子曰、貪夫徇財、烈士徇名、夸者死権、衆庶馮生。 

同明相照、同類相求。雲従龍、風従虎、聖人作而万物睹。伯夷叔斉雖賢、得夫子而名益彰。 

顔淵雖篤学、附驥尾而行益顕。厳穴之士、趣舍有時若此、類名堙滅而不称、悲夫。 

閭巷之人、欲砥行立名者、非附青雲之士、悪能施於後世哉。 

 

君子は亡くなって世を去っても、その名を称えるべきなのです。賈子は、 「よくばりな男は財産に殉じ、気性がつよく節義をまもる男は名に殉じ、 おごりたかぶった者は権力のために死に、そこらへんの人は命を惜しがる」といっています。 

同じ明かりのもとにいる者はたがいに照らしあい、同類はたがいを求めます。 

雲は龍につきしたがい、風は虎につきしたがい、りっぱな人はあらわれて万物をごらんになるのです。 

伯夷と叔斉はかしこい兄弟でしたが、業績をあきらかにされたので、 ますますその名を称えられたのです。

顔淵はりっぱな学問をした人でしたが、 孔子の弟子だったのでますますそのおこないが知れ渡ったのです。

仙人のようなきびしい暮らしをしているりっぱな人は、(書物に記すのを)取るか捨てるかによって、 このように業績が世に知られもし、あるいは名がうずもれて消えてしまって称えられなくなるのです。 悲しいことです。

ちまたの人で、研鑚をつんで名をたてようと思った人は、身分があって名声の高い人のところに弟子入りしないと後世に業績をのこせないのでしょうか?

 

杞憂 きゆう

「杞人(きじん)の憂い」「杞人天を憂う」

無用の心配をすること。取り越し苦労。  

使用例;杞憂に終わる。それは杞憂というものだ。

 

出典『列子』天瑞篇

杞は、周の武王が殷をほろぼしたとき、夏の禹王の子孫の東楼公を封じて禹の祭事をおこなわせた小国で、今の河南省杞県がその故都である。

 

その杞の国に、もし天が落ち地が崩れたなら身の置きどころがなくなるだろうと心配して、夜も眠れず食事ものどにとおらずにいる男がいた。

やつれきった様子に、友だちが心配して、諭しにやって来た。

 

「天というものは気の積み重なったものにすぎない。気はどこにでもあるものだ。そこいらじゅうが大気だ。人が体をまげたりのばしたり、息を吸ったり吐いたりするのは、みんな一日中、大気の中、天の中でやっていることだ。どうしてその天が落ちてくるなどと心配するのかね。」

「天がほんとうに気の積み重なったものなら、日や月や星は落ちてくるだろう」

「日や月や星も大気の中で光っとるだけだから、落ちやしない。落ちてきても怪我することはないんだ。」

「それじゃあ、大地が壊れたらどうする。」

「地が崩れたらどうしよう」

「大地は土の塊だ、大地は四方の果てまで土でいっぱいで、ないところはない。私たちが地に足をつけ歩くのも、一日中大地の上でやっていることだ。だから壊れることはないから、心配はいらん。」

心配していた男は釈然としていに喜んだ。それを見て、諭した者もまた、大いに喜んだ。 

 

長廬子曰く「天地がくずれはしないかと心配するのは、あまりにもさきの心配をしすぎるといわなければならないが、くずれないと断言することもまた正しいことではない」

列子曰く「天地がくずれようとくずれまいと、そんなことに心をみだされない無心の境地が大切なのだ」

 

蛍雪 けいせつ

「蛍雪の功」「蛍の光、窓の雪」

一生懸命学問に励むこと。特に貧しい中で苦心して学問をすること。

単に教育を受けることや、しっかり勉強をして学校を卒業することをさすこともある。

使用例;「『蛍雪』の労が生きたね。おめでとう。」

 

蛍雪の功

 晋の車胤は幼いころからつつしみ深く、まじめに学問をして飽きることもなく、あらゆる文献に目を通して、何にでも広く通じていた。家はとても貧しくて灯りの油をいつでも買えるというわけではなく、夏の夜になると練り絹の袋に蛍(ほたる)を数十匹入れてその明かりで書物を照らし、昼夜を通して勉強した。その努力が実を結んで、のちに尚書郎<司法のトップ>という高官に出世した。

 また晋の孫康も家が貧しくて、灯りの油がない生活を送っていた。冬の夜はいつも雪明かりに照らして読書した。若いときから清廉潔白で、友だちも悪いつきあいは避けるようにしてまじめに努力した。のちに御史大夫<行政のトップ>という長官に出世した。

 

逆鱗 げきりん

「逆鱗に触れる」

(龍の喉元にあるという逆さに生えた鱗に触れると龍は怒り触れた者を殺すことから)

天子の怒り。宸怒。派生して、目上の人の怒りもこう言う。

使用例;「何が社長の逆鱗に触れたのだろう。会議の翌日、僕は礼文島に飛ばされていた。」

 

出典;韓非子・説難

夫龍之為蟲也、柔可狎而騎也、然其喉下有逆鱗径尺、若人有嬰之者、則必殺人。人主亦有逆鱗。説者能無嬰人主之逆鱗、則幾矣。

 そもそも龍という動物は、おとなしくしている時には、人が慣らしてその背に乗る事ができる。しかし喉もとには一尺ばかり逆さに生えた鱗があり、もし人がそれに触れると、龍は必ず人を殺してしまう。人間の君主にもまた、この逆鱗がある。意見を述べる者は、君主の逆鱗に触れないようにできたならば、成功を収める事も望めるのだ。

 

【出典の解説】

春秋戦国時代には、儒家や道家、墨家(ぼっか)など、さまざまな思想を奉じる学派が現れた。彼らは総称して「諸子百家(しょしひゃっか)」と呼ばれたが、その中で、法律の整備によって富国強兵と君主権力の強化を図る学派は法家(ほうか)と呼ばれ、戦国時代の終盤に為政者の注目を集めた。

法家の思想を大成したのは、韓の国の貴族の家柄に生まれた韓非(かんぴ)。彼は儒家の荀子に師事した。荀子は「人間の本性とは欲深く怠惰なものだ」という「性悪説(せいあくせつ)」を唱え、「その悪い本性を、礼(礼儀)によって教化する」という思想を展開した。韓非は、荀子が強調した「礼」の代わりに、「法」によって人々を管理するべきだと考えた。また韓非は、商鞅(しょうおう)と申不害(しんふがい)という二人の法家の影響を色濃く受けた。商鞅は秦に仕えて峻厳に過ぎるほどの「法」を整備し、秦を大国へと押し上げる礎を築いた人物。申不害は、「法」と並んで「術」という概念の重要性を強調した思想家。

 

申不害の言う「術」とは、臣下を統制する方法である。臣下の評価はその能力の高低によるのではなく、臣下の言葉と業績が一致しているかどうかに基づいて賞罰を下すべきだ、という考えである。つまり、能力がない人物であっても、それを自覚して、自らできる範囲で忠実に職務をこなせばよい評価が下されるが、たとえすばらしい能力を持っていても、自らが立てた計画と実績が釣り合っていない場合は罰せられる事になる。韓非はこれら先達つ)の思想を受け、私情を差し挟む余地のない冷徹な法家思想を大成した。

 

韓非はまた、君主とはどうあるべきかという心構えを述べる一方で、君主に対する臣下の心得についても書き記している。韓非自身は生来のどもりだった事もあり、王から疎まれ、意見を具申しても聞き入れられなかった。その鬱屈した思いを込めて、自己の思想を筆に託した韓非であればこそ、君主を説得する事の難しさを、誰よりも切実に感じていたに違いない。主君を説得する事の困難さを伝える様々な寓話は、『説難(ぜいなん)』という篇にまとめられた。

韓非は君主を絶対的な力を秘めている龍に例えて、次のように述べている。「龍という動物は、おとなしくしている時には、慣らしてその背中に乗る事もできる。しかし喉もとには、一尺ばかり逆さに鱗(うろこ)が生えているところがある。その逆さに生えている鱗に触れようものなら、龍は怒り、必ずその人を殺してしまう。人間の君主にもまた、この逆さに生えた鱗があるのだ。君主を説得しようとする者は、君主のその逆さに生えた鱗に触れずに話を進める事ができれば、成功を収める事も遠くはないであろう」

 

韓非のこの寓話から、逆さに生えた鱗、すなわち「逆鱗」は国王の怒りを指すようになり、その怒りをかう事を「逆鱗に触れる」と言うようになった。生殺与奪の権を一手に握っている専制君主を相手にして臣下が意見を述べるのは、命がけだ。韓非の師匠である荀子も、君主を説得する難しさについては夙(つと)に嘆じており、「およそ説得する事が難しいのは、こちらが高い理想を抱きながら、心構えの卑しい君主に出会うというところにある」と述べている。

王族の一人として生まれながら、生母の身分が低く、どもりのために疎んぜられ、高い見識を自国の政治に活かす事ができなかった韓非。権謀術数の渦巻く王族のただ中に身を置いたせいで、他人の憎悪や欲望には人一倍敏感だった事だろう。自分の心中は見せず、相手の心の機微を見透かした上で説得する、というのは、いかにも理にかなっている。しかし、韓非の置かれた環境を慮(おもんぱか)った時、その透徹した思考の彼方に、一抹の哀しさが垣間見えるような気がする。

 

皓歯 こうし

「明眸皓歯」「皓歯明眸」などの4字熟語で用いられることが多い。

白くきれいな歯。コミックで歯が光る美男子、美女がいるがまさに皓歯。

なお、明眸皓歯はぱっちりした明るい瞳と真っ白に輝く歯の意。目元、口元の美しい美人の形容で女性のみ。 

使用例;白髪皓歯の男性は、ちょっと年齢不詳といった感じであった。

 

揣摩 しま

「揣摩憶測」「揣摩の術」

「揣」と「摩」はどちらも、おしはかるという意味で、他人の心や気持ちを自分なりに推量すること。

揣摩の術といえば、人を意のままに操る神秘的術で、これが算命学の別名とされていたとする説もある。

憶測はいいかげんな当て推量。 

揣摩憶測は根拠もなく自分勝手にあれこれ推量すること。

使用例;(4字熟語だが)「それは君の揣摩憶測にしか過ぎない。ぼくが浮気をするわけがない。」

 

算命学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

算命学(さんめいがく)は中国に発祥した干支暦をもとに、年と月と日の干支を出して、人の運命を占う中国占星術、中国陰陽五行を土台とした運命学の一流派であり、日本で生み出された。算命術ともいう。なお中国で算命という言葉は「運命を算出する」を意味しており、占術全般を指す用語である。

算命学の技法は、陰陽五行による思想学と占術としての運命学の二つの理論と技術を持ち、運命学理論を占術が証明し、占術の技法を陰陽五行の思想学が支えることを土台として、膨大な理論と技術の上に成り立つものである。

その膨大な技法と思想は、十六の理論体系となり十六元法といわれ、この技法を使うと、先祖三代、子孫三代まで占うことができるとされる。

算命学の占術、技法の根幹は、「人」は自然界の一部として、「人」の運勢を自然界に置き換えて運命を分析する技術、思想の体系にある。

算命学思想は「天」「地」「人」三才と陰陽の思想からなり、「人」の運命は、「役目と環境が一致するところにおいては、自然(古代においては神)がその人を必要とする存在となり、役目と環境が一致しないところにおいては、自然はその人を淘汰する。」という厳格な判断をする。 また、この思想によって、人の運命を予測することができるものとする。

 

日本のいわゆる算命を学んだ人達は、自分達の術の系統について以下のように自称している。

算命学の発祥は、中国春秋戦国時代の鬼谷子に始まるとされている。 それは、それまであった陰陽五行思想および、運命予測の技術をまとめた人とされるからである。但し、鬼谷子は、歴史学上は想像上の人物とするのが多数説であり、その実在性を疑問視する向きもある。鬼谷子については、史記列伝の蘇秦列伝 第九の冒頭に「東へ行って斉の国に師匠を求め、鬼谷先生について学問を習った。」とあり、揣摩の術を完成した。とある。また、史記列伝の張儀列伝 第十の冒頭に「張儀というのは、魏の人である。その始め蘇秦といっしょに鬼谷先生の門人として学問したことがあった・・・」とある。

蘇秦と張儀は、戦国時代の縦横家であり、張儀は秦の宰相となり、蘇秦は六国合従の宰相となった人である。蘇秦が完成したとされる揣摩の術は、人を意のままに操る神秘的術で、この揣摩の術が算命学の別名とされていたとする説もある。(以下 略)

 

守株 しゅしゅ

「守株待兎」

いたずらに古い習慣やしきたりにとらわれて、融通がきかないたとえ。また、偶然の幸運をあてにする愚かさ

のたとえ。木の切り株を見守って兎うさぎを待つ意から。株(くいぜ)を守る、ともいう。

使用例;「会議出席者が守株派の奴ばかりで、新案は否決されたよ。」

 

出典:『韓非子』

宋人に田を耕す者有り。田中に株有り。兎走りて株に触れ、頚を折りて死す。因りて其の耡を釈てて株を守り、復た兔を得んと翼(ねが)う。兔は復た得べからずして、身は宋国の笑いと為れり。

韓の国の王族であった『韓非』は、自国の置かれた危機と衰退の兆しに、国を救うにはいま迄のやり方を変え「君主独裁、法治」を実行する以外ないと考えていた。しかし、古来の氏姓制度に固執するいわゆる名門貴族たちは古の聖人たちのやり方が正統だと称し、『韓非』のいう庶政一新を頑として阻んでいた。

『韓非』がこうした貴族たちを揶揄していうには

「宋の国の人に、畑を耕している者があった。畑に切り株があり、ウサギが駆けてくるなり、切り株に当たり、頚を折って死んでしまった。それからというもの、男は自分の耡をほうり出して切り株の見張りをし、もう一度ウサギをせしめてくれようと念じた。だが、ウサギは2度とは手に入らず、その身は宋国の笑い者になった。」

「つまり、今、先王の政(まつりごと)に従って、今の世の中の民を統治しようとするのは、いずれも、切り株の見張りをする類である」と。

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童謡「待ちぼうけ」1923年(大正12年)北原白秋作詞:山田耕作作曲

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ。 ある日、せっせと野良稼ぎ、 

そこに兎が飛んで出て、ころり、ころげた 木のねっこ。

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ。しめた、これから寝て待とうか、 

待てば獲物が駆けて来る。兎ぶつかれ、木のねっこ。

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ。 昨日鍬(くわ)とり、畑仕事、 

今日は頬づえ、日向ぼこ。 うまい伐(き)り株、木のねっこ。

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ 今日は今日はで待ちぼうけ、 

明日は明日はで森のそと、兎待ち待ち、木のねっこ。

 

待ちぼうけ、待ちぼうけ。 もとは涼しい黍畑(きびばたけ)、 

いまは荒野(あれの)の箒草(はうきぐさ)。寒い北風、木のねっこ。

 

 

出藍 しゅつらん

「出藍の誉れ」。「青は藍より出て藍よりも青し」。

弟子が師よりもすぐれた才能をあらわすたとえ。

青色の染料は藍から取るものだが、もとの藍の葉より青くなることからいう。

使用例:「こいつはもう俺を超えたよ。まさに出藍。師匠冥利につきるぜ。」

出典:荀子勧学篇

 

  君子曰く、学は以て已(や)むべからず。

  青はこれを藍より取りて藍よりも青し、

  氷は水これを為せども水より冷たし、と。

 

後半の、氷は水でできているが水より冷たい、は今では忘れられたのかあまり耳にしない。

古来、布を青く染める際の染料として藍の葉をきざみ、乾燥と発酵をさせて、藍玉を作り、これを用いたところから生まれた言葉。

藍玉の色は青黒いが、それから染められた布地は鮮やかな青。くすんだ色の原料からより鮮やかな色が生まれることの不思議さを目にしてこの言葉が生まれたのだろう。

藍は自然に生えているだけであれば、ただの藍(タデアイ)という植物に過ぎない。この緑の葉という素材から手間を掛けて藍玉が生み出され、藍玉か らさらに鮮やかな青が生み出される。

人間も学問し続けることによって師をも乗り越えなければならない。学問に終点はない。已(や)まずに続けて青のように氷のように、その師匠を超えて行け。

 

 

 助長 じょちょう
①物事の成長・発展のために外から力を添えること。
②[孟子公孫丑上「予助苗長矣…苗則槁矣」]急速に成長させようとして、無理に力を添えかえってこれを
害すること。「弊害を―する」

 

 

推敲 すいこう
[唐詩紀事四十](唐の詩人賈島カトウが「僧推月下門」の句を得たが、「推(おす)」を改めて「敲(たたく)」にし
 ようかと迷って韓愈に問い、「敲」の字に決めたという故事) 詩文を作るのに字句をさまざまに考え練ること。

 

 

 杜撰 ずさん
(ズザンの訛。一説に、杜黙トモクの作った詩が多く律に合わなかったという故事から)
①著作で、典拠などが不確かで、いい加減なこと。
②物事の仕方がぞんざいで、手落ちが多いこと。正法眼蔵仏道「いまの―の長老等、みだりに宗の称を
 もはらする」。「―な計画」

 

 井蛙 せいあ
[荘子秋水]井の中にすむ蛙。見聞の狭い者をあざけっていう語。「―の見ケン」

 

 蛇足 だそく
[戦国策斉策](蛇の絵を描く競争で、早く描きあげた者が足まで書きそえて負けになったという故事から)
あっても益のない余計な物事。あっても無駄になるもの。じゃそく。「―ながら申し上げます」

 

 庭訓 ていきん
[論語季氏](孔子の子伯魚が庭を通った時、孔子に呼び止められ、詩と礼の大切さを教えられた故事から)
家庭の教訓。家庭教育。にわのおしえ。

 

 掉尾 ちょうび・とうび
①尾をふるうこと。
②物事や文章の終りに至って勢いのふるい立つこと。転じて、最後。とうび。「―の勇を奮う」「―を飾る」

 

 白眉 はくび
①白いまゆ。
②[三国志蜀志、馬良伝](蜀の馬氏の兄弟五人はみな才名があったが、特に眉の中に白毛があった馬良が
最も優れていたという故事から) 同類の中で最も傑出している人や物。「軍記物の―」

 

 覆轍 ふくてつ
(くつがえった車の轍ワダチの意から) 前人の失敗のあと。失敗の前例。太平記24「―遠からず」

 

 

 



 望蜀 ぼうしょく
[後漢書岑彭伝「人苦不知足、既平隴復望蜀」]一つの望みをとげてさらにその上を望むこと。足るを知らない
 こと。

 

 

 墨守 ぼくしゅ
(墨子がよく城を守った故事から)
古い習慣や自説を固く守りつづけること。融通がきかないこと。「旧習を―する」

 

 矛盾 むじゅん
①[詩経秦風小戎、疏「兵甲矛盾、備具如是」]矛ホコと盾タテ。
②戦い。喧嘩。日葡辞書「ムジュンニヲヨブ」
③[韓非子難1](楚の国に矛と盾とを売る者がいて、自分の矛はどんな盾をも破ることができ、自分の盾は
 どんな矛をも防ぐことができると誇っていたが、人に「お前の矛でお前の盾を突いたらどうか」といわれ、答え
 られなかったという故事に基づく) 事の前後のととのわないこと。つじつまの合わないこと。
 自家撞着。「前後が―した発言」
④〔論〕(contradiction) (明治15年「哲学字彙」初出)
⑤同一の命題が肯定されると同時に否定されること。あるいは、命題とその否定との連言(AかつAでない)。
⑥現実のうちにある両立
しがたい、相互に排斥しあうような事物・傾向・力などの関係。

 濫觴 らんしょう
[荀子子道「其源可以濫觴」](長江も水源にさかのぼれば、觴サカズキを濫ウカべるほどの、または觴に濫アフれる
 ほどの小さな流れである意) 物の始まり。物事の起原。おこり。もと。「近代医学の―」

 

 

 

 


ついでにこちらも…

挨拶あいさつ

 ①〔仏〕禅家で、問答を交して相手の悟りの深浅を試みること。
 ②うけこたえ。応答。返事。驢鞍橋ロアンキヨウ「いかが―あるべきや」。「何の―もない」
 ③人に会ったり別れたりするとき、儀礼的に取り交す言葉や動作。「朝の―」「時候の―」
 ④儀式・会合などで、祝意や謝意、親愛の気持、あるいは告示などを述べること。また、その言葉。「開会の―」  
 ⑤(「御―」の形で) 相手の挑発的な、礼を失したような言動を皮肉っていう語。
 ⑥仲裁。仲裁人。伎、お染久松色読販「そう見受けましたから―に這入りました」。「―人」
 ⑦紹介。紹介者。浄、国性爺合戦「仲人もない―ない二人」
 ⑧人と人との間柄。交際。日葡辞書「アイサッノヨイヒト」。日本永代蔵六「殊更いづれも―よく」


哀惜あいせき 

人の死などを悲しみ惜しむこと。「―の念に堪えない」


愛惜あいせき 

手放したり傷つけたりするのを惜しんで大切にすること。あいじゃく。「―の品」


生憎あいにく アヤニクの転)

期待や目的にはずれて、都合のわるいさま。折あしく。「―の雨だ」「お―さま」


曖昧あいまい 

はっきりしないこと。まぎらわしく、確かでないこと。「―な返事」「―に笑う」 


隘路あいろ

 ①狭い通路。狭くて通りにくい路。「山間の―」
 ②支障となるもの。障害。難点。「販路拡張の―」


阿吽あうん ( 「阿」は口を開いて発する音声で字音の初め、「吽」は口を閉じる時の音声で字音の終り。万物の初めと終りを象徴)
 ①最初と最後。密教では、「阿」を万物の根源、「吽」を一切が帰着する智徳とする。
 ②寺院山門の仁王や狛犬コマイヌなどの相。一は口を開き、他は口を閉じる。
 ③呼気と吸気。共に一つの事をする時などの相互の微妙な調子や気持。特に、それが一致することにいう。


閼伽あか 

〔仏〕(梵語argha; arghya) 貴賓または仏前に供えるもの。特に水をいう。また、それを入れる容器。


欠伸あくび

 ①眠い時、退屈な時、疲労した時などに不随意的に起る呼吸運動。
 口を大きくあけて、ゆるやかな長い吸息についでやや短い呼息を行う。血液中の酸素の欠乏等によって起る。
 ②漢字の旁ツクリの一。「欲」「欧」などの旁の「欠」の称。


胡座あぐら (「あ」は足、「くら」は座の意)
 ①腰掛け。胡床コシヨウ。古事記下「我が大君…―にいまし」
 ②(「間架」と書く) (高い所へ上るために)材木を高く組み立てたもの。あししろ。足場。竹取物語「―を結ひあげて」 
 ③(「趺坐」とも書く) 足を組んですわること。胡坐コザ。


悪辣あくらつ

 やり方があくどいこと。非常にたちのわるいこと。「―な手段」


阿漕あこぎ (地名「阿漕ヶ浦」の略。古今六帖3「逢ふことを―の島に引く網のたびかさならば人も知りなむ」の歌による)
 ①たびかさなること。源平盛衰記8「重ねて聞し召す事の有ければこそ―と仰せけめ」
 ②転じて、際限なくむさぼること。また、あつかましいさま。ひどく扱うさま。
  狂、比丘貞「―やの―やの今のさへ漸と舞うた、もう許してくれさしめ」。「―な仕打ち」
 ③能の一。伊勢国阿漕ヶ浦の漁夫が密漁して海に沈められ、地獄で苦しむさまを描く。


四阿あずまや

 【四阿・東屋・阿舎】(東国風のひなびた家の意)
 ①四方へ檐ノキを葺きおろした家屋。寄棟ヨセムネあるいは入母屋イリモヤ造。正倉院文書「草葺―一間」
 ②四方の柱だけで、壁がなく、屋根を四方葺きおろしにした小屋。庭園などの休息所とする。亭チン。
 ③催馬楽サイバラの曲名。
 ④源氏物語の巻名。宇治十帖の一。


唖然あぜん

 あきれて言葉が出ないさま。あいた口がふさがらないさま。「―とする」「―たる面持ち」


可惜あたら  

副 (アタラシの語幹。感動詞的に独立して、また連体詞的に名詞に冠して用いる)
 惜しくも。もったいないことに。惜しむべき。あったら。
 源氏物語若菜下「―人の文をこそ思ひやりなく書きけれ」。「―若い命を捨てた」
呆気あっけ 驚きあきれた状態。


遏絶あつぜつ

 ①一族を残らず滅ぼす。「遏絶苗民、無世在下=苗民ヲ遏絶シテ、世下ニ在ルコト無カラシム」〔書経〕
 ②おしとどめて物事をさせない。『遏止アツシ』 


斡旋あっせん

 ①事が進展するよう、人と人の間をとりもつこと。世話。周旋。「就職を―する」
 ②〔法〕労働法上、労働争議調整の一方法。労働関係調整法および国営企業労働関係法などにより
  労働委員会の会長が指名した斡旋員が争議当事者双方の間を仲介をし、争議解決に援助すること。


軋轢あつれき

 (車輪のきしる意から) 人の仲が悪くなること。不和。「嫁と姑の―」「―が生じる」


痘痕あばた

 痘瘡トウソウが治った後に残るあと。また、それに似たもの。


数多あまた

 ①(数量について) 多く。たくさん。允恭紀「―は寝ずにただ一夜のみ」。「―の人」「引く手―」
 ②(程度について) 非常に。甚だしく。万葉集7「沖つ波さわくを聞けば―悲しも」


阿諛あゆ

 おもねりへつらうこと。おべっか。「―迎合」「―追従ツイシヨウ」


行灯あんどん

 ①木などの框ワクに紙を貼り、中に油皿を入れて灯火をともす具。室内に置くもの、柱に掛けるもの、
 さげ歩くものなどがある。あんどう。紙灯。〈 嚢鈔〉。鶉衣「―挑灯の取違へも多勢に無勢叶はねば」
 ②40の隠語。東海道中膝栗毛2「えいは、そんだいあび手が、―(四〇文)にげんこ(五〇文)はふんだくるべい」
 ③表装で、長幅でも横長でもなく、丈のつまった中途半端なものの称。


安穏あんのん

 安らかにおだやかなこと。無事。「―に暮す」「―な一生」


帷幄いあく

 (「帷」はたれまく、「幄」はひきまくの意) 昔、陣営には幕をめぐらしたことから、作戦計画を立てる所。本陣。本営。「―の臣」


威嚇いかく

 武力や威力でおどすこと。おどかし。「―射撃」


遺憾いかん

 思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒。「―の意を表する」「―に思う」「―千万センバン」


縊死いし

 自分でくびをくくって死ぬこと。首くくり。首つり。


蝟集いしゅう

 蝟ハリネズミの毛のように、多く寄り集まること。「周囲に群衆が―する」


悪戯いたずら

 無益でわるいたわむれ。わるふざけ。わるさ。(手すさびを謙遜していうのにも用いる)
 狂、太刀奪タチバイ「色々―をいたしまする」。「子供の―」「―な園児」「ちょっと―してみました」
一掬いっきく 両手でひとすくいすること。また、その程度の水。ひとすくい。「将に―して百川の味はひを知れるなるべし」(芭蕉俳文)


一矢いっし

 一本いっぽんの矢や。


意図いと

 ①考えていること。おもわく。つもり。「敵の―を見抜く」
 ②行おうとめざしていること。また、その目的。「早期実現を―する」「―的なごまかし」


懿徳いとく

 大きい立派な徳。善美の徳。


畏怖いふ

 おそれおののくこと。おじること。


所謂いわゆる

 (言フの未然形に、上代の受身の助動詞ユの連体形が付いたもの) 世間で言われている。俗に言う。
 宇津保物語藤原君「―あて宮ぞかし」。「―団塊の世代」


慇懃いんぎん

 ①ねんごろなこと。ていねい。福富長者物語「―に畏まりて」。「―な挨拶」
 ②よしみ。親しい交わり。
 ③男女の情交。「―を通ずる」


因循いんじゅん

 ①古い習慣に因り循シタガっていて改めようとしないこと。
 ②決断力に欠け、ぐずぐずするさま。「―な男」


隠蔽いんぺい

 人または物が目につかないようおおうこと。かくすこと。掩蔽。隠匿。「証拠事実を―する」


有卦うけ

 陰陽道オンヨウドウで、その人の生年の干支エトにより、7年間吉事が続くという年まわり。


宇内うだい

 [史記秦始皇本紀「皇帝明徳、経理宇内視聴不怠」]天地の間。天下。あめがした。


団扇うちわ (打羽の意)
 ①細い竹を骨とし、紙または絹を張って柄をつけた、あおいで風を起す道具。多くは円形。  夏 。「―であおぐ」
 ②軍配団扇グンバイウチワの略。
 ③団扇 をかたどった紋所の名。一つ団扇・三つ団扇・団扇梅鉢などがある。


鬱屈うっくつ

 ①気が晴れないで、ふさぎこむこと。「―した心情」
 ②地勢が曲りくねっているさま。


産土うぶすな

 (ウブ(産)スとナ(土・地)との結合したもの。ウブスはウムスと同源。ウムスは略してムスとなり、「苔むす」などという)
 ①人の生れた土地。生地。本居。推古紀「葛城県は元臣ヤツコが―なり」
 ②「うぶすながみ」の略。


有無うむ

 ①有ることと無いこと。「経験の―は問わない」
 ②是非・諾否などの判断をはっきりさせること。狂、縄綯ナワナイ「いやそれは某が―の仔細を申さず遣はしましたによつて」
 ③仏教で、一切を有と見、あるいは無と見る説。有法と無法。謡、松尾「―中道を離れて、人を済度の方便」


烏鷺うろ 

①烏と鷺。 ②黒と白。 烏鷺の争あらそいとは囲碁いごのこと。


迂路うろ

 遠まわりのみち。


雨露うろ 

①雨と露。あめつゆ。「―をしのぐ」
 ②恩沢の広く及ぶこと。うるおい。謡、熊野ユヤ「―のめぐみ」


空・虚・洞 うろ

うつろな所。ほらあな。


疎覚え 確実でない記憶。「―のせりふ」


胡乱うろん (唐音。「胡」はでたらめの意)
 ①乱雑であること。いいかげんであること。また、不誠実なこと。史記抄「かき本は字が―で」
 ②疑わしいこと。うさんくさいこと。浄、国性爺合戦「証拠なくては―なり」。「―な目つき」「―な人物」


釉薬うわぐすり

 ※ 素焼スヤキの陶磁器の表面にかけて装飾と水分の吸収を防ぐために用いる一種のガラス質のもの。
 主成分は珪酸塩化合物。つやぐすり。ゆうやく。


曳航えいこう 

船が他の船をひっぱって航行すること。


盈満えいまん 

物事が十分に満ち足りること。


依怙えこ 

①[法華経普門品「観世音浄聖、於苦悩死厄、能為作依怙」]依りたのむこと。
 ②一方にかたよってひいきすること。かたびいき。えこひいき。平家物語5「かやうの事についてこそ、おのづから―も候へ」
 ③私利。天草本伊曾保物語「たばかつてするはかりことは一旦の―にはなれども」


回向えこう 

①自ら修めた功徳を自らの悟りのために、または他者の利益のためにめぐらすこと。
 ②仏事を営んで死者の成仏を祈ること。
 ③浄土教で、称名念仏の功徳クドクをめぐらして衆生の極楽往生に資すること。


壊死えし

 体の組織や細胞が局部的に死ぬこと。冷・熱・毒物・血流障害・外傷、細菌やウイルスの感染などによって起る。


似非えせ

 ①似てはいるが、実は本物ではないこと。まやかし。にせもの。「―ざいわい」「―学問」
 ②劣っていること。「―牛」「―太刀」
 ③悪質。一筋縄ではいかないこと。したたか。「―者」


穢多えた (「下学集」など中世以降、侮蔑の意をこめて「穢多」の2字を当てた) 中世・近世の賤民身分の一。
 牛馬の死体処理などに従事し、罪人の逮捕・処刑にも使役された。江戸幕藩体制下では、非人とともに
 士農工商より下位の身分に固定、一般に居住地や職業を制限され、皮革業に関与する者が多かった。
 1871年(明治4)太政官布告により平民の籍に編入された後も社会的差別が存続し、現在なお根絶されていない。
 塵袋「ゑとりをはやくいひて、いひゆがめて―と云へり、たととは通音也」


干支えと

 ①十干十二支。十干を五行(木・火・土・金・水)に配当し、陽をあらわす兄エ、陰をあらわす弟トをつけて名とした、
 甲キノエ・乙キノト・丙ヒノエ・丁ヒノト・戊ツチノエ・己ツチノト・庚カノエ・辛カノト・壬ミズノエ・癸ミズノトに、十二支を組み合せたもの。
 甲子キノエネ・乙丑キノトウシなど60種の組合せを年・月・日に当てて用いる。
 ②十二支。年、特に生年や方位・時刻に当てる。「今年の―は丑ウシだ」


会得えとく

 意味をよく理解して、自分のものとすること。「真理を―する」「機械の操作方法を―する」


演繹えんえき

 ①[朱熹、中庸章句序]意義を推し拡げて説明すること。
 ②(deduction) 推論の一種。前提を認めるならば、結論もまた必然的に認めざるをえないもの。
 数学における証明はその典型。演繹法。 帰納。


冤罪えんざい

 無実の罪。ぬれぎぬ。「―を晴らす」


厭世えんせい

 世の中をいやなものと思うこと。


援用えんよう

 自己の主張のたすけとして、他の文献・事実・慣例などを引用すること。「内外の資料を―する」


花魁おいらん

 (妹分の女郎や禿カブロなどが姉女郎をさして「おいら(己等)が」といって呼んだのに基づくという)
 ①江戸吉原の遊郭で、姉女郎の称。転じて一般に、上位の遊女の称。
 ②娼妓。女郎。
 ③甘藷の一品種。色は肉色か白で耐貯性に富む。あんこいも。


枉駕おうが

 [三国志蜀志、諸葛亮伝「将軍宜枉駕顧之」](「枉」は、まげる意) (乗物の行き先を変えて)
 わざわざ訪ねて来ること。相手の来訪を敬っていう語。枉車。枉顧。


押収おうしゅう 

証拠物または没収すべき物の占有を取得する刑事上の処分。強制力を用いる差押えと、
 任意に提出された物などについて強制力を用いない領置とがある。裁判所の提出命令をも含む。


横柄おうへい 

(「押柄オシカラ」の音読「押柄オウヘイ」から。「大柄」とも書く)

おごりたかぶって無礼なこと。そうした態度。尊大。
 狂、入間川「あの様に―に申す者はござらぬ」。「―な口をきく」


嗚咽おえつ

 むせび泣くこと。すすり泣くこと。「―が漏れる」


烏滸おこ

 おろかなこと。ばか。たわけ。古事記中「わが心しぞ、いや―にして」。「―の沙汰」


億劫おっくう

 (オッコウの転。時間が長くかかってやりきれない意から)

面倒くさくて気が進まないこと。「出かけるのは―だ」


越訴おっそ

 ①正規の手続を経ない違法の訴訟。
 ②中世の訴訟手続の一。判決に不服ある者が再審を求めて訴え出ること。または、その裁判。


恩賜おんし

 天皇・主君から賜ること。「―の御衣」「―公園」


恩讐おんしゅう

 情けとあだ。「―を超えた交わり」


乂安がいあん (カイアンとも)

世の中がよく治まって安らかなこと。治安。


快哉かいさい

 (「快なるかな」の意) 痛快なこと。「―を叫ぶ」


改竄かいざん

 (「竄」は改めかえる意) 字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる。「小切手の―」


海市かいし 蜃気楼シンキロウの別名。


懐柔かいじゅう

 巧みにてなずけ従わせること。てなずけ抱きこむこと。「―策」


晦渋かいじゅう 

言語・文章などがむずかしくて意味のわかりにくいこと。「―な文章」


海嘯かいしょう 

[楊慎、古今諺]満潮が河川を遡る際に、前面が垂直の壁となって、激しく波立ちながら進行する現象。  中国の銭塘江、イギリスのセヴァン川、南アメリカのアマゾン川の河口付近で顕著。タイダル‐ボーア。潮津波。  ポロロッカ。


灰燼かいじん

 灰ともえさし。もえかす。


駭世がいせ

 (「駭」は驚かすの意) 世の人を驚かすこと。


蓋世がいせい

 [史記項羽本紀「力抜山兮気蓋世」](世をおおいつくし圧倒する意から) 気力などが雄大であることの形容。「―の才」「抜山―」


咳唾がいだ

 ①せきとつば。また、せきばらいの声。
 ②[漢書淮陽憲王欽伝「大王誠賜咳唾」]目上の人の言葉を敬っていう語。
 [趙壱、刺世疾邪賦「咳唾自成珠」]ふと口をついて出た言葉が金玉のような名句名文であること。
 詩文の才が極めてゆたかであることのたとえ。


開闢かいびゃく

 ①天地の開けはじめ。世界のはじめ。また一般に、物事のはじまり。「本校―以来の出来事」
 ②開山。奥の細道「当山―能除大師」


傀儡かいらい

 ①あやつり人形。くぐつ。でく。
 ②転じて、人の手先になってその意のままに動く者。


乖離かいり

 むき離れること。はなればなれになること。「人心の―」「理想と現実との―」


呵呵かか

 大声で笑うさま。「―大笑」


瓦解がかい

 (屋根瓦の一部が落ちれば、その余勢で他の多くの瓦が崩れ落ちるように)

一部の崩れから全体が崩れること。「連邦制が―する」「幕府の―」


蝸角かかく

 蝸牛カタツムリの触角。転じて、狭い場所。


花卉かき

 (「卉」は多くの草) 観賞のために栽培する植物。花物・葉物・実物ミモノなどがある。「―園芸」


鶴首かくしゅ

 (鶴のように首を長くのばす意) 物事の到来を待ちわびること。「―して待つ」


馘首かくしゅ

 ①首を切りとること。
 ②免職にすること。解雇すること。「―反対闘争」


赫怒かくど

 はげしく怒ること。


神楽かぐら (「かむくら(神座)」の転)
 ①皇居および皇室との関連が深い神社で神をまつるために奏する歌舞。伴奏楽器は笏拍子シヤクビヨウシ・篳篥ヒチリキ・神楽笛カグラブエ・和琴ワゴンの4種。
 毎年12月に賢所カシコドコロで行われるものが代表的。 と区別する場合は御神楽ミカグラという。神遊カミアソビ。  冬 。源氏物語若菜「年ごとの春秋の―」
 ②民間の神社の祭儀で奏する歌舞。 と区別する場合は里神楽サトカグラという。全国各地に様々な系統がある。
 ③能の舞事の一。リズム豊かな曲で、小鼓が神楽特有の譜を奏し、女神・巫女などが幣ミテグラを手に舞う。
 ④狂言の舞事の一。能とは別の曲。巫女が鈴と扇を手にして舞う。
 ⑤歌舞伎囃子の一群。宮神楽・早神楽・本神楽・夜神楽(大べし)・三保神楽・岩戸・「あばれ」などがあり、
 神社またはその付近の場面に用いるのを原則とする。
 ⑥地歌の一。手事物。18世紀中頃、津山検校作曲。賀茂社の神楽とその弥栄を歌ったもの。別称、洞ホラの梅。


陽炎かげろう

 春のうららかな日に、野原などにちらちらと立ちのぼる気。日射のために熱くなった空気で光が不規則に屈折されて起るもの。
 いとゆう。はかないもの、ほのかなもの、あるかなきかに見えるもの、などを形容するのにも用いる。その際「蜉蝣カゲロウ」 を意味することもある。
 古今和歌集恋「―のそれかあらぬか春雨のふる日となれば」


加護かご

 神仏が力を加えて護ること。今昔物語集17「此れ、法花の持者ジシヤを―し給ふ故なりけり」


過誤かご

 あやまち。あやまり。やり損じ。「―を犯す」


駕籠かご

 乗物の一。古くは竹、後には木でも作り、人のすわる部分の上に1本の轅ナガエを通し、前後から舁カいて運ぶもの。
 身分・階級・用途などにより種類が多い。


瑕疵かし

 ①きず。欠点。
 ②〔法〕行為・物・権利などに本来あるべき要件や性質が欠けていること。意思表示の取消し、売主の担保責任などの前提となる。


仮借かしゃく

 ①かりること。
 ②みのがすこと。ゆるすこと。


呵責かしゃく

 叱り責めること。責めさいなむこと。仏足石歌(題詞)「生死を―す」。「良心の―」


華燭かしょく

 婚礼の儀式などの席上の、はなやかなともしび。


瓦斯がす ガス


苛政かせい

 苛酷な政治。虐政。
 [礼記檀弓下]住民に重税や徴兵などの負担を強いる苛酷な政治は、人食い虎よりも更に凶暴で、人々を苦しめる。


河清かせい

 黄河の濁流が澄んで清くなること。転じて、望んでも実現しないこと。=百年ひゃくねん河清を待まつ


河川かせん

 河カワ。多く、大きい河と小さい川とを総称していう。


瓦全がぜん

 [北斉書元景安伝「大丈夫寧可玉砕不能瓦全」]何もしないでいたずらに身の安全を保つこと。甎全センゼン。⇔玉砕


固唾かたず

 (古くはカタツとも) 緊張して息をこらす時などに口中にたまる唾ツバ。


渦中かちゅう

 ①水のうずまく中。
 ②紛乱した事件の中。「―に身を投ず」


割愛かつあい

 ①愛執を断ち切ること。沙石集9「―出家の沙門、なんぞ世財をあらそはん」
 ②惜しく思うものを思いきって手放したり省略したりすること。「紙数が尽きたので―する」


赫赫かっかく

 ①赤くかがやくさま。熱気を発するさま。「烈日―」
 ②あらわれて盛んなさま。功名などの人にすぐれているさま。「―たる戦果」


闊達かったつ

 (古くはカツダツ) 度量がひろく、物事にこだわらぬこと。こせこせしないこと。「自由―な気風」


滑脱かつだつ

 とどこおらず、自在に変化すること。「円転―」


葛藤かっとう

 (葛カズラや藤のつるがもつれからむことから)
 ①もつれ。いざこざ。悶着モンチヤク。争い。「両家の―がつづく」
 ②〔心〕心の中に、それぞれ違った方向あるいは相反する方向の力があって、その選択に迷う状態。
 「心の中に―を生じる」「心理的―」
 ③〔仏〕禅宗で文字言語のこと。また、公案のこと。


割烹かっぽう

 ①(肉を割サき烹ニる意から) 食物の調理。多く日本料理にいう。
 ② ①を供する料理屋。


刮目かつもく

 目をこすってよく注意して見ること。刮眼。「―に価する」「―して待つ」


首途かどで 

門出。旅や出陣などのため自分の家を出発すること。比喩的に、新しい生活や仕事をはじめることにもいう。
  たびだち。かどいで。万葉集14「赤駒が―をしつつ出でかてに」。「人生の―」


禍福かふく

 わざわいとしあわせ。禍福は糾アザナえる縄の如し。


画餅がべい (ガヘイとも)

絵にかいた餅、すなわち実際の役に立たないもの。


過褒かほう

 ほめすぎること。過賞。


蒲鉾かまぼこ

 ①ガマの花の穂。
 ②(昔は、おもに竹串を芯として筒形に造り、その形がガマの花穂に似ていたからいう)
   白身の魚のすり身に卵白・調味料をまぜてこね、板に盛り、または簀巻にして、蒸したり焼いたりした食品。
 ③蒲鉾小屋の略。
 ④宝石をはめていない中高の指輪。


剃刀かみそり (「髪剃り」の意)
 ①頭髪・ひげなどを剃るのに用いる鋭利な刃物。こうぞり。「―を当てる」
 ②比喩的に、才気鋭く果断なこと。また、その人。
 ③(僧の隠語) 鮨スシ。


蚊帳かや 

蚊を防ぐために吊り下げて寝床をおおうもの。麻布・絽ロ・木綿などで作る。かちょう。


硝子がらす

 ①石英・炭酸ナトリウム・石灰石などを原料として、高温度に熱して溶融し、冷却して製した硬く脆モロく透明な物質。
  着色には金属の酸化物を混ずる。用途が多く、種々の器具・建材に製する。玻璃ハリ。
 ②広義には、融点以上の高温で溶融した物体を急冷・固化させた等方性無定形物質。


伽藍がらん 〔仏〕(梵語 sa gh r ma  僧伽藍の略。衆園・僧園と訳す)
 ①僧侶たちが住んで仏道を修行する、清浄閑静な所。
 ②後に寺院の建築物の称。「七堂―」


看過かんか

 ①大したことではないとして見のがすこと。大目にみること。「―できない事態」
 ②見すごすこと。見おとすこと。


眼窩がんか

 眼球がはいっている頭骨前面のあな。めだまのあな。がんわ。「―に入る」


灌漑かんがい

 田畑に水を引いてそそぎ、土地をうるおすこと。「―用水」


侃諤かんがく

 剛直で言を曲げないこと。遠慮することなく論議すること。侃々諤々。


看経かんきん

 ①経文を黙読すること。⇔諷経フギン。
 ②後には、経文を読むこと。読経。諷経。
 ③経典を研究のために読むこと。


癇癪かんしゃく

 神経過敏で怒りやすい性質。また、怒り出すこと。癇癖カンペキ。「―を起す」


甘受かんじゅ

 さからわずに甘んじて受けること。(もとは、快く受ける意) 「運命を―する」


含羞がんしゅう はにかみ。はじらい。


雁書がんしょ 手紙。書簡。


陥穽かんせい

 ①獣などを陥れて捕える穴。おとしあな。
 ②人を陥れるはかりごと。「―にはまる」


奸佞かんねい

 心がねじけて人にへつらうこと。また、その人。「―な性質」


旱魃かんばつ (古くはカンバチとも。「魃」は、ひでりの神)

長い間雨が降らず、水が涸カれること。ひでり。
 特に、農業に水の必要な夏季のひでりにいう 。「―の被害」


煥発かんぱつ

 [広川書跋]火が燃え出るように、美点や精彩ある事柄が外面に輝きあらわれること。「才気―」


管鮑かんぽう

 管仲と鮑叔牙。管鮑の交りで友人同士の親密な交際。


飢渇きかつ

 うえとかわき。食物や飲物がない苦しみ。


巍巍ぎぎ

 高く大きいさま。「山容―」「―堂々」


冀求ききゅう 願いもとめること。けく。


規矩きく

 ①(「規」はコンパス、「矩」は物さしの意) 手本。規則。「―準縄ジユンジヨウ」
 ②規矩術に同じ。㊀オランダ流の測量術。寛永(1624~1644)年間、樋口権右衛門にはじまる。

            ㊁(和算用語) 作図により問題を解く一つの方法。

            ㊂指矩サシガネを使って、建築用木材に工作用の墨付けをする技術。


危惧きぐ

 あやぶみおそれること。不安心。気がかり。危懼キク。「―をいだく」「将来を―する」


気障きざ (「きざわり」の略)
 ①心にかかり、苦になること。心配。誹風柳多留5「あたらしい通ひに―な引き残り」
 ②服装・態度・行動などが気取っていて、人に不快や反感を感じさせること。いやみ。「―な奴」


愧死きし

 恥じ入って死ぬこと。また、死ぬほど心苦しく思うこと。慙死ザンシ。


擬似ぎじ

 本物とよく似ていて区別をつけにくいこと。「―赤痢」「―的症状」「宇宙飛行の―体験」


忌憚きたん

 [中庸]いみはばかること。遠慮。「―なく述べる」「―のない意見」


鞠躬如きっきゅうじょ (「如」は語調をととのえるため添えた語)

身を屈めて慎みかしこまるさま。「―として参上する」


喫緊きっきん

 さしせまって大切なこと。吃緊。「―の要事」


佶屈きっくつ

 ①かがまってのびないさま。「―した老梅」
 ②文字・文章がかたくるしくて難解なこと。「―な詩」


拮抗きっこう

 勢力・力がほぼ等しく、相対抗して互いに屈しないこと。頡頏ケツコウ。「―した力量」


生粋きっすい

 まじりけが全くないこと。純粋。「―の江戸っ子」


帰納きのう

 (induction) 推理および思考の手続の一。個々の具体的事実から一般的な命題ないし法則を導き出すこと。
 特殊から普遍を導き出すこと。⇔演繹エンエキ。


羈絆きはん

 ①牛馬などを綱などでつなぎとめること。また、その物。
 ②行動を束縛するもの。足手まといになるもの。ほだし。きずな。


忌避きひ

 ①[論衡四諱]忌み避けること。きらって避けること。「徴兵を―する」
 ②〔法〕訴訟事件等において、裁判官または裁判所書記官などが不公平な裁判を行うおそれのある場合に、
 訴訟当事者の申立てによって、それらの人をその事件の職務執行から排除すること。


欺瞞ぎまん

 人目をあざむき、だますこと。「―に満ちた言動」


肌理きめ

 ①皮膚の表面のこまかいあや。「―細やかな肌」
 ②物の表面に現れたこまかいあや。手ざわりの感じ。文理。


脚絆きゃはん

 ①旅などで、歩きやすくするため脛にまとう布。脛巾ハバキ。
 ②巻脚半マキキヤハンに同じ。脚絆の一種で、小幅の長い布を足に巻きしめて用いるもの。ゲートル。


躬行きゅうこう

 口で言う通りを、みずから実際に行うこと。「実践―」


鳩首きゅうしゅ

 (「鳩」は集める意) 人々が集まって相談すること。


糾弾きゅうだん

 罪状を問いただして非難すること。「汚職を―する」


毀誉きよ

 そしることとほめること。「―褒貶ホウヘン」


暁暗ぎょうあん

 暁に月がなく、暗いこと。また、夜明け前の暗いとき。あかつきやみ。


強諫きょうかん

 強くいさめること。


恭倹きょうけん

 人に対してうやうやしく、自分の行いは慎み深いこと。「―己を持す」


恐惶きょうこう

 ①恐れかしこむこと。
 ②候文ソウロウブンの手紙の終りに記す挨拶語。


教唆きょうさ

 ①教えそそのかすこと。「―煽動」
 ②〔法〕他人に犯罪または不法行為の実行を決意させる行為。


狭窄きょうさく

 すぼまって狭いこと。「幽門―」


矜持きょうじ (キンジは慣用読み)

自分の能力を信じていだく誇り。自負。プライド。「矜持」とも書く。「横綱としての―」「―を保つ」


拱手きょうしゅ (コウシュは慣用読み)
 ①中国で敬礼の一。両手を組み合せて胸元で上下すること。
 ②手を組んで何もせずにいること。袖手。

 

強靱きょうじん

 強くてねばりのあること。しなやかで強いこと。「―な筋肉」「―な精神」


驚倒きょうとう

 ひどく驚くこと。


玉砕ぎょくさい

 [北斉書元景安伝「大丈夫寧可玉砕、不能瓦全」]玉が美しく砕けるように、名誉や忠義を重んじて、いさぎよく死ぬこと。⇔瓦全


綺羅きら

 ①あやぎぬとうすぎぬ。美しい衣服。平家物語1「―充満して、堂上花の如し」
 ②外見の美しさ。はなやかさ。曾我物語4「装束ども―天を輝かし」。「―を飾る」
 ③栄華。威光。平家物語12「世の覚え、時の―めでたかりき」


騏驎きりん

 ①1日に千里も走るという駿馬シユンメ。
 ②「麒麟」に同じ。

 

麒麟きりん

 ①(雄を「麒」、雌を「麟」という) 中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物。形は鹿に似て大きく、尾は牛に、蹄は馬に似、背毛は五彩で毛は黄色。頭上に肉に包まれた角がある。生草を踏まず生物を食わないという。一角獣。孝徳紀「鳳凰・―・白雉・白烏、かかる鳥獣より」
 ②最も傑出した人物のたとえ。浄、国性爺合戦「日本の―是なるはと異国に武徳照しけり」
 ③〔動〕ウシ目キリン科の哺乳類。頭までの高さは4メートルを超え、哺乳類中もっとも高い。雌雄とも角がある。毛色と斑紋は亜種によって差がある。現在はサハラ砂漠以南のアフリカの草原にだけ分布。ジラフ。


 緊褌きんこん

 褌フンドシをしっかりしめること。


空閨くうけい

 夫または妻がいないひとりねの淋しい寝室。空房。「―を守る」


駆馳くち

 ①車馬を馳ハせること。
 ②世事に奔走すること。馳駆。


功徳くどく

 ①よい果報をもたらすもととなる善行。「―を積む」「―を施す」
 ②善行の結果として与えられる神仏のめぐみ。ごりやく。「―がある」


愚弄ぐろう

 人をあなどり、からかうこと。「人を―する」


玄人くろうと

 ①技芸などその道に熟達した人。専門家。
 ②芸妓・娼妓などの称。⇔素人シロウト。


慧眼けいがん

 物事をよく見抜くすぐれた眼力。鋭い洞察力。「―の士」


傾城けいせい

 [漢書外戚伝上、孝武李夫人「一顧傾人城、再顧傾人国」](美人が色香で城や国を傾け滅ぼす意。「契情」は音意共にうつした当て字)
 ①美人。平家物語11「ただし大将軍矢おもてに進んで―を御覧ぜば」
 ②遊女。近世では、特に太夫を指す。女郎。傾国。


軽率けいそつ

 かるがるしいさま。かるはずみなさま。「軽卒」とも書く。「―な行動」


境内けいだい

 ①境界のうち。⇔境外。
 ②社寺の境域の内。


閨閥けいばつ

 妻の一族を中心に結ばれた人のつながり。


啓蒙けいもう

 (「啓」はひらく、「蒙」はくらい意) 無知蒙昧な状態を啓発して教え導くこと。〈文明本節用集〉。「大衆を―する」


警邏けいら

 (警察官が)見回って警戒すること。また、その人。


軽羅けいら

 軽いうすもの。うすい絹布。


希有けう

 ①めったにないこと。まれにあること。「―な出来事」
 ②ふしぎなこと。奇異なこと。源氏物語手習「いと怪しく―の事をなむ見給ふべし」


怪訝けげん

 不思議で合点のゆかないさま。「―な顔」


譎詐けっさ

 いつわりあざむくこと。いつわり。


潔癖けっぺき

 不潔や不正を極度に嫌うこと。また、そういう性質。「―な政治家」


健気けなげ (ケナリゲの転)
 ①勇ましいさま。勇健。狂、棒縛「―なことでござる」
 ②しっかりして強いさま。すこやかなさま。健康。蒙求抄1「ああ―な老者かな」
 ③殊勝シユシヨウ。天草本金句集「よい主人は智慧ある者を使ひ、―な者を使ひ」
 ④(子供など弱い者が)けんめいに努めるさま。「―に働く」


解熱げねつ

 高熱の体温をさげること。


懸念けねん

 ①〔仏〕執念シユウネン。執着シユウジヤク。
 ②気にかかって不安に思うこと。心配。「一抹の―を抱く」


狷介けんかい

 国語晋語2「小心狷介、不敢行也」](「狷」は頑固、「介」は堅いこと。現在は多く悪い意に使う)
 固く自分の意志をまもって人と妥協しないこと。「―な老人」「―孤高」「―固陋コロウ」


衒学げんがく

 学問のあることをひけらかし、自慢すること。


軒昂けんこう

 気持がふるいたつさま。「意気―」


喧囂けんごう

 やかましいこと。さわがしいこと。喧々囂々。


厳粛げんしゅく

 ①おごそかで、心が引きしまるさま。厳格で静粛なこと。「式は―に執り行われた」「―な雰囲気」
 ②それを真剣に受け取らなければならないさま。厳として動かしがたいこと。「―に受けとめる」「―な事実」


言質げんち

 後日の証拠となる(約束の)ことば。ことばじち。「げんしつ」「げんしち」は、誤読による慣用読み。「―を取る」


剣呑けんのん

 (ケンナンの転という。「剣呑」は当て字) あやういこと。あやぶむこと。花暦八笑人「化の皮があらはれんと、しきりに―に思ひ」


語彙ごい

 〔言〕(vocabulary) 一つの言語の、あるいはその中の特定の範囲についての、単語の総体。
 また、ある範囲の単語を集めて一定の順序に並べた書物。「日本語の―」「親族―」「近松―」


好悪こうお

 好むこととにくむこと。すききらい。「―がはげしい」


梗概こうがい

 大略。あらまし。あらすじ。「小説の―」


慷慨こうがい

 社会の不義や不正を憤って嘆くこと。うれいなげくこと。「政治腐敗を―する」「悲憤―」


広闊こうかつ

 ひろびろとして、ながめのひらけていること。「―な平原」


巷間こうかん

 ちまた。世間。「―の俗説」


浩瀚こうかん

 (「浩」も「瀚」も広大の意) 書籍の大部なこと。また、書籍の多いこと。「―の書」「―な蔵書」


薨去こうきょ

 皇族または三位以上の人の死去。薨逝コウセイ。


肯綮こうけい

 (「肯」は骨につく肉、「綮」は筋と肉との結合する所) かんじんな所。急所。
 意見や批判などが急所をついてうまくあたる。


鴻鵠こうこく

 鴻オオトリと鵠クグイ。大きな鳥をいう。転じて、大人物。


恍惚こうこつ

 ①物事に心を奪われて、うっとりとするさま。「―として聞き惚れる」
 ②ぼんやりしてはっきりしないさま。老人などの衰弱した精神状態にいう。


後嗣こうし

 あとつぎ。子孫。


幸甚こうじん

 何よりのしあわせ。多く、手紙に用いる。万葉集5「敬ツツシみて徳音を奉ウケタマはりぬ。――といへり」。「御返事いただければ―です」


昂然こうぜん

 自負があって意気のあがるさま。「―たる態度」「―として言い放つ」


浩然こうぜん

 ①水が盛んに流れるさま。
 ②心などが広くゆったりしているさま。「―たる態度」


公租こうそ 

公けの目的のために課せられる金銭負担の一。国税・地方税の総称。「―公課」


拘泥こうでい 

こだわること。小さい事に執着して融通がきかないこと。「勝敗に―しない」


更迭こうてつ 

(「迭」は、かわる意) 役目や職などについている人がかわること。また、かえること。「大臣を―する」


傲慢ごうまん

 おごり高ぶって人をあなどること。見くだして礼を欠くこと。「―な態度」「―無礼」


枯渇こかつ

 ①かわいて水分がなくなること。
 ②つき果てて、なくなること。「資金が―する」「才能の―」


狐疑こぎ

 (狐キツネは疑い深い獣だといわれるところから) 事に臨んで疑いためらうこと。
 開目抄「一切経並びに人師の疏釈を見るに、―氷とけぬ」。「―逡巡シユンジユン」


沽券こけん

 (「沽」は売る意)
 ①売渡しの証文。売券ウリケン。
 ②売り値。東海道中膝栗毛2「ハアそんなら惣地代で―はいくら」
 ③人の値打ち。品位。体面。


孤高ここう

 ひとりかけはなれて高い境地にいること。ひとり超然としていること。「―を持する」「―の人」


股肱ここう

 ももとひじ。転じて、手足となって働く、君主が最もたよりとする家臣。

太平記18「我を以て元首の将とし、汝を以て―の臣たらしむ」


固執こしゅう (コシツとも)
 ①自分の意見などをかたく主張して枉マげないこと。「自説に―する」
 ②〔心〕過去の印象や特定の行動などが心の中に残っていてそれが反復出現すること。
湖沼こしょう みずうみとぬま。四方陸地に囲まれて、海とは直接連絡のない静止した水塊。湖沼学では比較的深いものを湖、比較的浅いものを沼という。


姑息こそく

 (「姑」はしばらくの意) 一時のまにあわせ。その場のがれ。「―な手段」「因循―」


木霊こだま

 (室町時代までは清音)
 ①樹木の精霊。木魂。源氏物語手習「鬼か神か狐か―か」
 ②やまびこ。反響。日葡辞書「コタマ、即ちヤマビコ」。「呼び声が―する」
 ③歌舞伎囃子の一。深山または谷底のやまびこに擬するもの。小鼓2梃でポポン、ポポンと打ち合う。


忽然こつぜん

 (コツネンとも) にわかなさま。たちまち。突然。忽如。宇治拾遺物語12「―として失せぬ」。「―と姿を現す」


誤謬ごびゅう

 あやまり。まちがい。「―を正す」


顧眄こべん

 ふり返って見ること。また、まわりをみること。


独楽こま

 子供の玩具。円い木製の胴に心棒(軸)を貫き、これを中心として回転させるもの。種類が多い。多く、正月の遊びの具とする。「―を回す」


顳顬こめかみ

 (米を噛むとき、動く所の意) 耳の上部と目尻との間の、物を噛めば動く所。しょうじゅ。〈和名抄3〉


固陋ころう

 見聞が狭くてかたくなであること。古いことに頑固に執着し、新しいものを嫌うこと。「頑迷―」


強面こわもて

 (コワオモテの約) おそろしい顔つき。また、相手に対してつよく出ること。


渾身こんしん

 全身。からだ全体。満身。「―の力をふりしぼる」


困憊こんぱい

 疲れはてること。苦しみ疲れること。「疲労―」
    
月代さかやき

 男の額髪を頭の中央にかけて半月形に剃り落したもの。もと冠の下にあたる部分を剃った。応仁の乱後は武士が気の逆上を防ぐために剃ったといい、江戸時代には庶民の間にも行われ、成人のしるしとなった。つきしろ。ひたいつき。世間胸算用2「―剃つて髪結うて」


錯綜さくそう

 複雑に入りくむこと。入りまじること。「情報が―する」


雑魚ざこ

 ①種々入りまじった小魚。小さい魚。こざかな。梁塵秘抄「大津の西の浦へ―漉スきに」
 ②転じて、(大物に対する)小物。「捕まったのは―ばかり」


桟敷さじき

 ①祭の行列などを見物するために高く構えた床。さんじき。宇津保物語藤原君「加茂川のほとりに―打ちて」
 ②劇場・相撲場などで、板を敷いて土間ドマより高く構えた見物席。江戸時代、芝居小屋では土間の左右に上下2段の桟敷席を構えた。


詐称さしょう

 (氏名・職業・年齢などを)いつわって称すること。「経歴―」


左袒さたん

 左の片はだを脱ぐこと。転じて、人を助ける。加勢する。味方する。▽漢の周勃シュウボツが呂氏リョシの乱をしずめようとして、
 「呂氏のためにしようとする者は右袒せよ、劉リュウ氏のためにしようとする者は左袒せよ」といったとき、全軍が左袒した故事から。


颯爽さっそう

 人の態度・行動などが、勇ましくさわやかに感ぜられるさま。「―と現れる」


殺戮さつりく

 むごたらしく多くの人を殺すこと。「大量―」


蹉跌さてつ

 ①つまずくこと。   ②失敗すること。「―をきたす」


些末さまつ 

わずかなこと。取るに足りないこと。些細ササイ。「―な事にこだわる」


散逸さんいつ

 まとまっていた書物・文献などが散りうせること。「原本は―した」「―物語」


慚愧ざんき

 ①恥じ入ること。「―に堪えない」
 ②悪口を言うこと。そしること。平家物語11「むげに情なかりけるものかなとぞ皆人―しける」


懺悔ざんげ 

〔仏〕(梵語k ama  「懺」はその音写、「悔」はその意訳。ザンギサンゲ(慚愧懺悔)と熟して用いることが多かったために、  ザンギの影響で濁音化して江戸時代にザンゲとなったかという) 過去に犯した罪を神仏や人々の前で告白して許しを請うこと。
 日葡辞書「ザイシャウ(罪障)ヲサンゲスル」


塹壕ざんごう

 ①城のまわりのほり。
 ②野戦で敵の攻撃から身を隠す防御施設。溝を掘りその土を前に積み上げたもの。「―戦」


残滓ざんし

 のこりかす。のこったかす。「旧制度の―」


燦然さんぜん

 きらきらと光るさま。「―と輝く宝玉」「―たる栄誉」


簒奪さんだつ

 帝位を奪いとること。簒位。「王位を―する」


三昧ざんまい

  (ザンマイとも) 〔仏〕
 ①(梵語sam dhiの音訳。三摩地・三摩提とも。定・正定・等持・寂静などと訳す) 心が統一され、安定した状態。一つのことに心が
 専注された状態。四種三昧・念仏三昧など諸種の行法がある。源氏物語松風「念仏の―をばさるものにて」 三昧場サンマイバの略。
 ②(他の名詞に付いて、ザンマイと濁音化する)
 ②-①一心不乱に事をするさま。「読書―」
 ②-②むやみやたらにするさま。「刃物―」「ぜいたく―」


簒立ざんりつ

 君位を奪ってその位につくこと。


恣意しい

 気ままな心。自分勝手な考え。「―的な解釈」


嗜虐しぎゃく

 残虐なことを好むこと。「―性」


弑虐しぎゃく

 「しいぎゃく」は慣用かんよう読よみ。主君・父などを殺すこと。


仕種しぐさ

 ①ある物事をするときの、動作や表情。「少女のような―」
 ②(「科」とも書く) 舞台における俳優の表情・動作。所作シヨサ。


忸怩じくじ

 恥じ入るさま。「内心―たるものがある」


時雨しぐれ

 (「過ぐる」から出た語で、通り雨の意)
 ①秋の末から冬の初め頃に、降ったりやんだりする雨。  冬 。万葉集8「時待ちてふりし―の雨止みぬ」
 ②比喩的に、涙を流すこと。「袖の―」
 ③一しきり続くもののたとえ。「蝉―」
 ④小督局コゴウノツボネの用いた琴の名。
 ⑤本阿弥光悦作の名物茶碗の名。
 ⑥時雨羹シグレカンの略。
 ⑦時雨饅頭シグレマンジユウの略。


時化しけ (「時化」は当て字か)
 ①暴風雨のつづくこと。海の荒れること。⇔凪ナギ。
 ②暴風雨のため、波が荒れて魚類のとれないこと。不漁。
 ③転じて、興行・商店の不入り。不景気。


至極しごく

 ①この上ないこと。最上。万葉集5「―の大聖」
 ②きわみをつくすこと。頂点に達すること。太平記24「奇怪―なり」。「迷惑―」「残念―」
 ③きわめてもっともなこと。道理にかなっていること。好色一代男6「―にあつかひ」
 ④もっともだと思うこと。納得すること。西鶴織留2「母が言葉を一つも忘れなといへば、娘もこれを―して」
 ⑤(副詞的に用いて) きわめて。この上なく。「―ごもっとも」


爾今じこん

 今より後。この後。以後。爾後。日本永代蔵1「―は大分に貸すこと無用」


刺繍ししゅう

 (「刺」は針で縫うこと、「繍」は衣に文様を施すこと) 布地に色糸で絵画や文様を縫い表すこと。また、そのもの。ぬいとり。


指嗾しそう

 指図してそそのかすこと。けしかけること。


耳朶じだ

 ①みみたぶ。        ②みみ。「―に残る」


輜重しちょう

 (「輜」は衣類をのせる車、「重」は荷をのせる車)
 ①旅行者の荷物。
 ②軍隊に付属する糧食・被服・武器・弾薬など軍需品の総称。また、その輸送に任ずる兵科。


昵懇じっこん

 (「昵」は、したしむ意) こころやすいこと。親しいこと。懇意。「―の間柄」「彼とは―にしている」


失墜しっつい

 ①おとすこと。失うこと。「権威を―する」
 ②むだに使うこと。徒費。浪費。甲陽軍鑑10「肴買ひたる代物、―にまかり成り候」
 ③見落し。数えちがい。日本永代蔵1「是、観音の銭なれば、いづれも―なく返納したてまつる」


竹箆しっぺい

 ①〔仏〕禅家で、師家シケが修行者の指導に用いる竹製の杖。長さは約一尺五寸。竹で「へら」の形に作り、籐を巻き、漆を塗る。
 ②片手の人差指と中指とをそろえて相手の手の甲・手首などを打つこと。しっぺ。日葡辞書「シッペイヲハジク」


執拗しつよう

 ①頑固に自分の意見を通そうとすること。片意地。しつおう。「―に食いさがる」
 ②うるさくまつわること。しつこいこと。「―につきまとう」


老舗しにせ

 ①先祖代々の業を守りつぐこと。浄、心中天の網島「商売は所柄なり―なり」
 ②先祖代々から続いて繁昌している店。また、それによって得た顧客の信用・愛顧。「創業二百年の―」「―ののれんを守る」


東雲しののめ

 (一説に、「め」は原始的住居の明り取りの役目を果していた網代様アジロヨウの粗い編み目のことで、篠竹を材料として作られた「め」が「篠の目」と呼ばれた。これが、明り取りそのものの意になり、転じて夜明けの薄明り、さらに夜明けそのものの意になったとする)
 ①東の空がわずかに明るくなる頃。あけがた。あかつき。あけぼの。古今和歌集恋「―のほがらほがらと明けゆけば」
 ②明け方に、東の空にたなびく雲。


屡々しばしば

 たびたび。幾度も。どど。万葉集1「―も見さけむ山を情ココロなく雲の隠さふべしや」。「―訪れる」


雌伏しふく

[後漢書趙温伝]将来に活躍の日を期しながら、しばらく他人の支配に服して堪えていること。「―十年」⇔雄飛


諮問しもん

 意見を尋ね求めること。下の者や識者の意見を求めること。「―機関」⇔答申


雀躍じゃくやく

 こおどりして喜ぶこと。「欣喜―」


邪険じゃけん

 慈悲心なく、むごくあつかうこと。意地の悪いこと。太平記37「―放逸なる戎の有けるが」。「―に突きとばす」「―な言い方」


社稷しゃしょく

 ①[礼記祭義]昔の中国で、建国のとき、天子・諸侯が壇を設けて祭った土地の神(社)と五穀の神(稷)。
 ②[論語先臣]国家。朝廷。「―を憂える」


借款しゃっかん

 (「款」は契約の条項の意) 国際間の資金の貸借。政府借款と民間借款とに分ける。


洒落しゃれ

 ①気のきいたさま。いきなこと。黄、高漫斉行脚日記「諸事―を好み」
 ②気のきいた身なりをすること。おしゃれ。金々先生栄花夢「あらゆる当世の―をつくせば」
 ③座興にいう気のきいた文句。ことばの同音をいかしていう地口ジグチ。
   黄、世上洒落見絵図「これはどうだ秀郷ヒデサトと悪い―をいつたら」。「―が通じない」「駄―」
 ④たわむれに軽くふざけてする事。冗談事。「―にならない」


蒐集しゅうしゅう 収集に同じ。 

 ①あちこちから取り集めること。「ごみの―」
 ②(趣味や研究のために、ある品物や資料などを)いろいろと集めること。また、その集めたもの。「切手の―」


祝着しゅうちゃく

 ①よろこび祝うこと。いわうこと。慶賀。
 ②満足に思うこと。狂、入間川「私へ下されねば―にもござらぬ」。「―至極に存じます」


蹂躙じゅうりん

 ふみにじること。ふみつけること。特に、暴威・暴力あるいは強大な勢いを以て、他人の権利・国土などを侵害すること。「人権―」


収斂しゅうれん

 ①収縮すること。収縮させること。
 ②(穀物などを)とりおさめること。収穫。
 ③租税をとりたてること。
 ④〔理〕(focussing) ( )集束に同じ。
 ⑤(convergence)
 ⑤-①〔数〕( )収束 に同じ。
 ⑤-②〔生〕生物進化の過程で、系統の異なる生物が、次第に形質が似てくること。
   例えば、オーストラリアにすむ有袋類の諸種は他の大陸の哺乳類にそれぞれ類似する。相近。 分岐。


侏儒しゅじゅ

 ①こびと。一寸法師。
 ②(昔、中国でこびとを俳優に用いたのでいう) 俳優。
 ③見識のない人をあざけっていう語。
 ④梁ハリの上に立てる短い柱。うだち。侏儒柱。


入水じゅすい

 水中に身を投げて自殺すること。身投げ。投身。


鬚髯しゅぜん

 あごひげと、ほおひげ。


出来しゅったい

 ①事件の起ること。「珍事が―する」
 ②物事のでき上がること。成就。「近日―の予定」


手套しゅとう

 てぶくろ。


旬日じゅんじつ

 10日間。10日ほど。「―を経ずして」


遵守じゅんしゅ

 きまり・法律・道理などにしたがい、よく守ること。順守じゅんしゅ。「規則を―する」


逡巡しゅんじゅん

 ぐずぐずすること。ためらうこと。しりごみすること。「―して好機をのがした」「遅疑チギ―」


浚渫しゅんせつ

 水底の土砂や岩石をさらうこと。河川の流路を拡げ、航路の水深を増し、また埋立用の土砂を採取するなどの目的で行う。


蠢動しゅんどう

 ①虫などのうごめくこと。
 ②転じて、取るに足りないものが策動すること。「不平分子が―し始める」


俊髦しゅんぼう

 (「髦」は長い髪の意) すぐれた人。


障碍しょうがい 障害に同じ。
  ①さわり。さまたげ。じゃま。「―を乗りこえる」
 ②身体器官に何らかのさわりがあって機能を果さないこと。「言語―」
 ③障害競走・障害物競走の略。


猖獗しょうけつ

 ①たけくあらあらしいこと。わるいものの勢いの盛んなこと。「コレラが―を極める」
 ②[三国志蜀志、諸葛亮伝]傾きくつがえること。失敗すること。猖蹶。


瀟洒しょうしゃ

 ①すっきりとしてあかぬけしたさま。「―な身なり」
 ②俗を離れてあっさりしているさま。洒脱。


蕭々しょうしょう

 ①ものさびしく風の吹くさま。ものさびしく雨の降るさま。源平盛衰記39「松吹く風―たり」。「―たる霖雨リンウ」
 ②ものさびしいさま。


饒舌じょうぜつ

 口数が多いこと。多弁なこと。おしゃべり。「無用の―」「―な文章」「―家」


尚早しょうそう

 そのことをするにはまだ早すぎること。「時期―」
松濤しょうとう

 松風の音を波の音にたとえていう語。


檣頭しょうとう

 船ふねのマストの先端。


常套じょうとう

 変化なくありふれたさま。きまったしかた。「―的なやりかた」


焦眉しょうび

 (火が眉マユを焦がすほどに迫る意) 危険が迫ること。燃眉。「―の問題」


証憑しょうひょう

 事実を証明する根拠。証拠。


慴伏しょうふく

 おそれてひれふすこと。懾伏・懾服。


従容しょうよう

 ゆったりとして迫らぬさま。おちついたさま。「―として死に就く」「―たる態度」


慫慂しょうよう

 傍らから誘いすすめること。「―黙モダし難く」


逍遥しょうよう

 ①そこここをぶらぶらと歩くこと。散歩。伊勢物語「昔、男、―しに、思ふどちかいつらねて」。「野山を―する」
 ②心を俗世間の外に遊ばせること。悠々自適して楽しむこと。


招来しょうらい

 招きよせること。「災いを―する」「外人指揮者を―する」


照覧しょうらん

 あきらかに見ること。神仏がごらんになること。「神々も―あれ」


瘴癘しょうれい

 気候・風土のために起る伝染性の熱病。風土病。


褥瘡じょくそう

 圧迫性壊疽エソの一。重症患者が長期間病床にある場合に、衣類・寝具によって圧迫を受ける部位に生ずる。蓐傷。とこずれ。


書肆しょし

 本屋。書店。


痔瘻じろう

 痔疾の一種。急性肛門周囲炎または結核性など慢性の肛門周囲炎が自潰して、肛門部または直腸部に瘻孔を生じ、絶えず膿汁を出すもの。あなじ。蓮痔ハスジ。


素人しろうと

 (シロヒトの音便形。室町時代にはシラウト。「しろと」ともいう)
 ①ある物事に経験のない人。その事を職業としない人。専門でない人。しらひと。風姿花伝「―の老人が…舞ひ奏カナでんが如し」。「―らしからぬ技量」「ずぶの―」⇔玄人クロウト。
 ②素人女の略。⇔玄人クロウト。
 ③近世、京坂で私娼のこと。白人ハクジン。浄、女殺油地獄「かくとはいかで―の田舎の客に揚げられて」


塵埃じんあい

 ①ちりやほこり。ごみ。
 ②よごれて、わずらわしいもの。俗世間。俗事。「―を逃れる」


呻吟しんぎん

 うめくこと。苦しみうなること。「病床に―する」「詩作に―する」


真摯しんし

 まじめでひたむきなさま。「―な態度」


滲出しんしゅつ

 ①にじみ出ること。しみ出ること。
 ②炎症の際、血漿成分が血管外に出ること。


浸潤しんじゅん

 ①(液体が)しみこんで濡れること。
 ②(思想や勢力が)次第にしみこんで広がること。


進捗しんちょく

 ①物事が進みはかどること。「工事の―状況」
 ②官位などをすすめのぼすこと。


宸しん翰かん

 天子の直筆の文書。宸筆。


辛辣しんらつ

 ①味がきわめてからいこと。
 ②きわめて手きびしいこと。「―な批評」


誰何すいか

 「誰か」と声をかけて名を問いただすこと。呼びとがめること。「入口で―される」


垂涎すいぜん

 (スイセン・スイエンとも)
 ①食物を欲しがってよだれをたらすこと。
 ②あるものを非常に強くほしがること。「―の的マト」


出納すいとう (トウは慣用音)
 ①出すことと入れること。だしいれ。すいのう。しゅつのう。
 ②金銭または物品の収入と支出。「―係」
 ③蔵人所クロウドドコロに属し、財物・文書の出納などをつかさどった職。


掏摸すり

 (摩スリの意) 往来・乗物などで、他人の金品などを掠カスめ取ること。また、その盗人。ちぼ。巾着キンチヤク切り。


逝去せいきょ

 他人の死の尊敬語。「御―を悼む」


正鵠せいこく

 (セイコウは慣用読み)[礼記中庸]
 ①弓の的マトの中央の黒ぼし。
 ②ねらいどころ。物事の急所。要点。「―を誤る」
 核心をつく。「正鵠を射る」とも。「その推察は正鵠を得ている」


脆弱ぜいじゃく

 身体・器物・組織などが、もろくよわいこと。


掣肘せいちゅう

 [呂氏春秋審応覧](ひじを引っぱる意) 傍から干渉して自由に行動させないこと。「―を加える」
静謐せいひつ 静かであること。特に、世の中がおだやかに治まること。太平。平家物語7「国家―の精祈をいたす」。「―の世」


声涙せいるい

 こえとなみだ。  慷慨・悲憤して泣きながら語る。


寂寞せきばく

 ものさびしいさま。ひっそりしたさま。じゃくまく。「―たる深夜」


席巻せっけん

 [史記魏豹彭越伝、賛]席ムシロを巻くように片端から土地を攻め取ること。転じて、圧倒的に自分の勢力範囲に収めること。「市場を―する」


切歯せっし

 ①歯と歯とをきしり合せること。歯をくいしばること。はがみ。はぎしり。
 ②ひどく無念に思うこと。
 ③門歯に同じ。


雪駄せった

 竹皮草履の裏に牛皮を張りつけたもの。千利休の創意という。のち踵カカトに裏鉄ウラガネを付けた。せちだ。席駄セキダ。


折衷せっちゅう

 [史記孔子世家、賛]あれこれと取捨して適当なところをとること。日葡辞書「セッチュウスル」。「―案」「和洋―」


刹那せつな

 〔仏〕(梵語 k a a の音写) 極めて短い時間。一説に、一弾指(指ではじく短い時間)の間に65刹那あるという。一瞬間。


舌鋒ぜっぽう

 言葉のほこ先。するどい弁舌。激しい弁論の調子。「―鋭く論ずる」


台詞せりふ

 ①芝居で、俳優が劇中の人物として述べることば。
 ②きまり文句。儀礼的な口上。浮世風呂4「紺屋の明後日、作者の明晩、久しい―と合点して」
 ③苦情を言うこと。言い分を述べること。談判。浄、長町女腹切「お花はこちの奉公人、親仁との―ならどこぞ外でしたがよい」
 ④支払いをすること。伎、五大力恋緘「今夜中に―して下さんせにやなりませぬ」
 ⑤ことば。言いぐさ。「その―を聞いて腹が立った」


禅譲ぜんじょう

 ①中国で、帝王がその位を世襲せずに有徳者に譲ること。尭が舜に、舜が禹に帝位を譲った類。
 ②天子が皇位を譲ること。


漸進ぜんしん

 段階を追って次第に進むこと。「―的」


剪定せんてい

 ①果樹・茶・庭木などの生育や結実を均一にし、樹形を整えるため、枝の一部を切り取ること。
 ②摘芽・摘花・剪枝・摘葉などの総称。かりこみ。


仙洞せんとう

 ①仙人の居所。
 ②太上天皇(上皇)の御所。院の御所。かすみのほら。はこやのやま。仙院。
 ③太上天皇の称。狂、鴈雁金ガンカリガネ「―これを聞こしめし」


全幅ぜんぷく

 ①はばいっぱい。
 ②あらんかぎり。「―の信頼」


先鞭せんべん

 [晋書「常恐祖生先吾著鞭」](劉 リユウコンが、友人の祖逖ソテキが自分より先に馬に鞭打って走らせ名をあげるのではないかと心配した故事から)
  他人より先に着手すること。道をつけること。さきがけ。「―をつける」


発条ぜんまい

 うずまき状に巻いた弾力ある鋼鉄条。形が薇ゼンマイの若葉に似る。玩具・時計などの動力に使う。渦巻ばね。はつじょう。
 螺旋ラセン状のばねと同義に用いることもある。「―を巻く」


殲滅せんめつ

 皆殺しにして滅ぼすこと。滅ぼしつくすこと。「敵を―する」


蒼穹そうきゅう

 あおぞら。おおぞら。蒼天。


巣窟そうくつ

 悪者などのかくれが。「犯罪の―」


造詣ぞうけい

 学問または技芸に深く達していること。「―が深い」


糟糠そうこう

 ①酒かすとぬか。粗末な食物。日葡辞書「ウ(飢)エテサウカウヲエラ(択)バズ」
 ②(比喩的に) 取るに足りないくだらないもの。平家物語4「清盛入道は平氏の―、武家の塵芥チンガイなり」


相好そうごう

 (仏の容貌の特徴を三十二相八十種好というところから) 顔つき。顔かたち。


相殺そうさい

 ①互いに差し引いて損得なしにすること。
 ②〔法〕二人が相互に負担する同種の債務を、その一方的な意思表示により対当額において消滅させること。


装填そうてん

 中につめこんで装置すること。「弾薬を―する」「フィルムの―」


掻爬そうは

 〔医〕組織をかきとること。特に子宮腔内面をかきとり、内容を除去する手術は主として人工妊娠中絶に用いられる。


糟粕そうはく

 ①酒のかす。
 ②(「糟魄」とも書く) 転じて、滋味をとり去った残りかす。精神の抜けた外形。「古人の―」
蒼茫そうぼう 見渡す限り青々と広いさま。「―たる大海」


遡及そきゅう

 過去にさかのぼること。


仄聞そくぶん

 ほのかに聞くこと。間接的にちょっと聞くこと。「―するところによると」


齟齬そご

 くいちがい。ゆきちがい。「―をきたす」


粗肴そこう

 粗末な肴サカナ。肴を人にすすめる時の謙譲語。


素行そこう

 平素の行状。平生のおこない。「―がおさまらない」「―不良」


遡行そこう

 流れをさかのぼって行くこと。


咀嚼そしゃく

 ①かみくだくこと。かみくだいて味わうこと。
 ②物事や文章などの意味をよく考えて味わうこと。


粗相そそう

 ①粗末なこと。粗略なこと。栄華物語若枝「扇なども、賜はせたらむは―にぞあらむかし、など思ひて」
 ②そそっかしいこと。軽率。浅井三代記「汝―なる者かな」
 ③あやまち。しそこない。また、ぶしつけなこと。浄、菅原伝授手習鑑「そばで―言うた」。「とんだ―を致しました」
 ④大小便をもらすこと。「子供が―する」


阻喪そそう

 元気がくじけて勢いの失せること。気落ちすること。「意気―」


訴追そつい

 ①検察官が刑事事件につき公訴を提起し、これを維持すること。
 ②弾劾の申立てをして裁判官・人事官の罷免を求めること。
 ③弾劾裁判所。
 ④検事総長などが司法警察職員の懲戒・罷免を求めること。


雀斑そばかす

 人の顔面などにできる茶褐色の小斑点。ソバの実の殻からに似ているのでいう。夏日斑カジツハン。雀卵斑。


粗密そみつ

 あらいこととこまかいこと。まばらなことときめのこまかいこと。「人口の―」


算盤そろばん

 ①計算器の一。横長浅底の箱に横に梁を設け、これを貫いて縦に串を渡し、串に5個ないし7個の珠を貫く。珠は梁上に1個(もしくは2個)あって1個で5を表し、梁下に5個(現在では主に4個)あって1個で1を表す。
 この珠を上下して加減乗除をする。中国の発明で宋末から元代に行われ、日本へは室町末期頃伝来したらしく、
 文禄(1592~1596)年間の記録と実物が現存する。
 ②勘定。計算。採算。


蹲踞そんきょ

 ①うずくまって居ること。尻を地につけずに身をかがめること。
 ②敬礼の一。貴人の通行に出会った時、両膝を折ってうずくまり頭を垂れて行なったもの。
  また、後世、貴人の面前を通る時、膝と手とを座につけて会釈すること。
 ③相撲や剣道で、つま先立ちで深く腰を下ろし、膝を開いて上体を正した姿勢。


樽俎そんそ

 ①酒のたると、牲イケニエを載せる台。
 ②転じて、酒宴の席、または国際上の会見・談判。


忖度そんたく

 (「忖」も「度」も、はかる意) 他人の心中をおしはかること。推察。「相手の気持を―する」


大廈たいか

 大きい建物。大楼。「―高楼」
 ○大廈の材は一丘イツキユウの木にあらず
[王褒、四子講徳論]大事業は必ず大勢の力によるもので、決して一人の力でできるものではない。
○大廈の顛タオれんとするは一木イチボクの支ササうる所にあらず
[文中子事君]大勢タイセイがすでに傾きかけている時には、一人の力ではどうすることもできない。


醍醐だいご

 五味の第5。乳を精製して得られる最も美味なるもの。仏教の最高真理にたとえる。


対峙たいじ

 相対してそばだつこと。向きあって立つこと。「―する両軍」


泰斗たいと

 (泰山や北斗のように) その道で世人から最も仰ぎ尊ばれている権威者。


駘蕩たいとう

 のどかなさま。のんびりしたさま。「春風―」


頽廃たいはい

 おとろえすたれること。気風がくずれること。また、その不健全な気風。廃頽。


松明たいまつ

 (タキマツ(焚松)の音便) 松のやにの多い部分または竹・葦などを束ね、これに火を点じて屋外の照明用としたもの。
  うちまつ。しょうめい。ついまつ。「―をともす」


蛇蝎だかつ

 蛇と蝎サソリ。人が恐れきらうもののたとえ。じゃかつ。「―のごとく嫌う」


唾棄だき

 つばを吐き棄てるように、捨てて顧みないこと。忌み嫌い軽蔑すること。「―すべき人物」


山車だし

 (ダシは「出し物」の意で、神の依代ヨリシロとして突き出した飾りに由来するという) 祭礼の時、
 種々の飾り物などをして引き出す車。屋台。  夏 。「―を引く」


出汁だし

 鰹節・昆布・椎茸などを煮出した汁。にだし。だしじる。


黄昏たそがれ

 ①「たそがれどき」の略。源氏物語夕顔「寄りてこそそれかとも見め―にほのぼの見つる花の夕顔」
 ②比喩的に、物事が終りに近づき、衰えの見える頃。「人生の―」


蹈鞴たたら

 ①足で踏んで空気を吹き送る大きなふいご。地踏鞴。〈神代紀上訓注〉
 ②「たたらぶき」の略。


手綱たづな

 ①馬を御するため、馬のくつわにつけた綱。轡 クツワズラ。「―を引く」
 ②鎧を着た者が烏帽子エボシをつけた上に結ぶ鉢巻。源平盛衰記34「烏帽子に―打たせて」

  ③ふんどし。下帯シタオビ。曾我物語1「船越引き立てて―とりかへ出しけり」


殺陣たて

 演劇や映画で、闘争・殺人・捕物などの格闘の演技。たちまわり。「―師」


足袋たび

 足の形に作った袋状の履物。親指と他の指が分れる形とし、合せ目を爪形の小鉤コハゼで留める。もと草鞋掛ワラジガケ・防寒用、のち礼装用。
 革製は鎌倉時代末頃から行われ、木綿製は1643年(寛永20)頃に始まる。古くは筒が長く、ひもで結んだ。  冬 。〈和名抄13〉。
 宇治拾遺物語11「猿の皮の―に、沓きりはきなして」


荼毘だび

 〔仏〕(パーリ語 jh peta  焼身・焚焼の意) 火葬。また、葬式。「―に付する」


度々たびたび

 同じことが何度も繰り返して行われるさま。毎度。毎回。しばしば。「―注意を受ける」「―の訪問」


拿捕だほ

 ①とらえること。つかまえて自由を得させぬこと。
 ②〔法〕(capture) 戦時に、敵の船舶や貨物またはある種の中立船舶や貨物を、封鎖侵破または戦時禁制品輸送などの理由で
 一時押収すること。捕獲審検所で審検し、戦時国際法に違反するものは没収。


達磨だるま

 ①(梵語 Bodhidharma  菩提達磨) 禅宗の始祖。生没年未詳。南インドのバラモンに生れ、般若多羅に学ぶ。
 中国に渡って梁の武帝との問答を経て、嵩山の少林寺に入り、9年間面壁坐禅したという。その伝には伝説的要素が多い。
 その教えは弟子の慧可エカに伝えられた。諡号シゴウは円覚大師・達磨大師。達摩。
 ②達磨大師の坐禅した姿に模した張子の玩具。普通、顔面以外の部分を赤く塗り、底を重くして、倒してもすぐ真直に立つように作る。
 開運の縁起物とし、願いごとがかなった時に目玉を描き入れるならわしがある。不倒翁。「―に目を入れる」
 ③だるま②のような、ずんぐりと丸い形状。「雪―」「火―になる」
 ④下等な売春婦の異称。じごく。


弾劾だんがい

 ①罪や不正をあばき責任を追及すること。きびしく人を攻撃すること。「―演説」
 ②公務員の罷免手続の一。


段丘だんきゅう

 河川・湖・海などに接する階段状の地形。もとの氾濫原や浅海底であった平坦な部分と、  その前面に河川や海水の浸食によって形成された急斜面とから成る。


端倪たんげい

 ①[荘子大宗師](「端」はいとぐち、「倪」ははての意) 事の始めと終り。本末。
 ②きわ。はし。
 ③[韓愈、送高閑上人序「旭之書変動猶鬼神不可端倪」]推測すること。測り知ること。「―すべからず」


箪笥たんす

 衣服・小道具などを整理・保管するのに用いる家具の総称。多く木材で作り、引出しや開き戸を付ける。「茶―」「洋服―」「整理―」


断腸だんちょう

 [世説新語黜免](子を失い悲しみのあまり死んだ母猿の腸が細かくちぎれていたという故事から) 腸がちぎれるほど悲しいこと。  悲しみに堪えないこと。万葉集5「独り―の泣ナミダを流す」。「―の思い」


団欒だんらん

 ①月などのまるいこと。まどか。
 ②集まって車座にすわること。まどい。
 ③集まってなごやかに楽しむこと。親密で楽しい会合。「一家―」


知悉ちしつ

 知りつくすこと。詳しく知ること。「内情を―している」


釣果ちょうか

 釣りの成果。釣りの獲物。


鳥瞰ちょうかん

 (鳥が見おろすように)高い所から広範囲に見おろすこと。転じて、全体を大きく眺め渡すこと。


寵児ちょうじ

 ①特別にかわいがられる子供。
 ②時流に乗ってもてはやされる人。「時代の―」


手水ちょうず

 ①手・顔などを洗う水。
 ②社寺など参拝の前に、手・顔を洗い清めること。
 ③厠カワヤ。また、厠に行くこと。
 ④大小便。


蝶番ちょうつがい

 ①開き戸・蓋などに用いる金具。両片から成り、一片は枠に、他片は戸などにうちつけて開閉できるようにするもの。ちょうばん。「―が外れる」
 ②物事をつなぎとめるもの。特に関節。「ひざの―」


凋落ちょうらく

 ①花などがしぼみおちること。また、容色がおとろえること。
 ②おちぶれること。「名家が―する」
 ③おとろえて死ぬこと。


跳梁ちょうりょう

 ①はねまわること。
 ②悪人などがわがもの顔にのさばること。「ならず者が―する」「―跋扈バツコ」


嘲弄ちょうろう

 あざけりなぶること。ばかにすること。「人に―される」


丁髷ちょんまげ

 (チョンは髷が「ゝ」の形に似ているところからという) 男の髪の結い方の一。江戸中期以降、額髪を広く剃りあげ、  髻モトドリを前面に向けてまげた小さい髷。のち男髷の汎称。「―あたま」


縮緬ちりめん 絹織物の一。経糸タテイトに撚ヨリのない生糸、緯糸ヨコイトに強撚糊つけの生糸を用いて平織に製織した後に、ソーダをまぜた石鹸液で  数時間煮沸することによって緯の撚が戻ろうとして布面に細かく皺をたたせたもの。書言字考節用集「 紗、縮綿、チリメン」


闖入ちんにゅう

 ことわりなく突然はいりこむこと。


追従ついしょう

 人のあとにつき従うこと。転じて、こびへつらうこと。おべっかをつかうこと。「お―を言う」


朔日ついたち

 ツキタチ(月立)の音便。こもっていた月が出はじめる意)
 ①西方の空に、日の入ったあと、月がほのかに見えはじめる日を初めとして、それから10日ばかりの間の称。
 (陰暦の)月のはじめ。上旬。初旬。伊勢物語「時はやよひの―、雨そほふるに」
 ②月の第1日。1日。(古くは「ついたちの日」ということが多い) 蜻蛉日記下「閏二月の―の日、雨のどかなり」
 ③特に、正月1日。元旦。紫式部日記「ことしの―、御まかなひ、宰相の君」


追儺ついな

 宮中の年中行事の一。大晦日の夜、悪鬼を払い疫病を除く儀式。舎人トネリの鬼に扮装した者を、内裏の四門をめぐって追いまわす。
 大舎人長が方相氏ホウソウシの役をつとめ、黄金四つ目の仮面をかぶり、玄衣朱裳を着し、手に矛・楯を執った。 これを大儺タイナといい、紺の布衣に緋の抹額マツコウを着けて大儺に従って駆けまわる童子を小儺シヨウナとよぶ。 殿上人は桃の弓、葦の矢で鬼を射る。古く中国に始まり、日本には7世紀末、文武天皇の頃から伝わり、社寺・民間にも行われた。
 近世、民間では、節分の行事となる。「おにやらい」「なやらい」とも。


月並つきなみ

 ①毎月。月ごと。例月。枕草子297「―の御屏風もをかし」
 ②平凡なこと。陳腐なこと。ありきたり。「―なせりふ」
 ③月ごとにあること。
  ㋐月並会の略。
  ㋑月並俳句の略。
  ㋒月次祭ツキナミノマツリの略。
  ㋓月経。月のもの。
 ④月齢。拾遺和歌集秋「水の面に照る―を数ふれば」


辻褄つじつま

 (「辻」は道があい、「褄」は左右があうものであるからいう。また、辻も褄も裁縫用語という) あうべきところがあうはずの物事の道理。始めと終り。筋道。


葛籠つづら

  衣服を入れる、アオツヅラの蔓で編んだかご。後には竹やヒノキの薄板で作り、上に紙を貼った。つづらこ。


伝手つて

 (動詞ツ(伝)ツの連用形からか。一説に、ツタヘの転)
 ①ことづて。ひとづて。源氏物語若菜上「―にうけたまはれば」
 ②てづる。てがかり。日葡辞書「ツテヲキイテフミ(文)ヲヤラウズ」。「あの会社には―がない」
 ③物のついで。源氏物語椎本「―に見し宿の桜を」


飛礫つぶて

 小石を投げること。また、その小石。たぶて。宇津保物語蔵開中「かかる―どもして方々にぞ打たせ給へるに」。日葡辞書「カネヲツブテニウツ」


氷柱つらら

 雨雪などの水が軒・岩角などに滴る時、こおって棒のように垂れさがったもの。たるひ。


釣瓶つるべ

 縄や竿の先につけて井戸の水を汲み上げる桶オケ。また、その装置。神代紀下「玉の―を以て水を汲む」


悪阻つわり

 妊婦が妊娠2~4ヵ月頃に、悪心・吐気・食欲不振を起す状態。多く、酸味を好む傾向がある。おそ。


体裁ていさい

 ①物の、外から見える形・様子。「―のいい箱」
 ②自分の状態について、他人が見たときの感じ。みえ。世間体。「―をとりつくろう」「―上にこやかに振舞う」「―家」
 ③相手の気に入りそうな表面だけのこと。「お―をいう」


為体ていたらく

 ①すがた。ありさま。平家物語7「覚明が―、褐の直垂に黒革縅の鎧きて」
 ②(後世は非難の意をこめて用いる) ざま。「何という―だ」
適宜てきぎ ①その場合・状況にぴったり合っていること。適当。「―の処置」
 ②便宜に従うこと。随意。「その辺のところは―でよい」「―休みをとる」


顛末てんまつ

 (「顛」は、いただきの意) 事の初めから終りまでのありさま。事のいきさつ。一部始終。「事の―を話す」


纏綿てんめん

 ①からみつくこと。まといつくこと。
 ②情緒が深く、こまやかで離れにくいさま。「情緒―」


韜晦とうかい

 [旧唐書宣宗紀](「韜」はつつむ意、「晦」はくらます意)自分の才能・地位などをつつみかくすこと。形跡をくらましかくすこと。「自己―」


登とう極ぎょく

 天皇が即位すること。太平記21「それ継体君―の御時、様々の大礼有るべし」


憧憬どうけい

 (正しくはショウケイ) あこがれること。「―のまと」


慟哭どうこく

 大声をあげてなげき泣くこと。「思いがけない訃報に―する」


撞着どうちゃく

 ①つきあたること。ぶつかること。
 ②前後が一致しないこと。つじつまが合わないこと。矛盾。「自家―」


疼痛とうつう

 ずきずき痛むこと。うずくこと。また、そのいたみ。


同胞どうほう

 ①はらから。兄弟姉妹。平家物語11「骨肉―の義すでにたえ」
 ②同じ国民・民族。「海外の―が結束する」


瞠目どうもく

 驚いたり感心したりして目をみはること。


篤農とくのう

 熱心で研究的な農業者。篤農家。


督励とくれい

 仕事・任務を進めるため、監督し励ますこと。「部下を―する」


髑髏どくろ

 されこうべ。しゃれこうべ。〈日葡〉


吐瀉としゃ

 嘔吐と下痢。はきくだし。


屠蘇とそ

 ①魏の名医華佗カダの処方という、年始に飲む薬。山椒サンシヨウ・防風・白朮ビヤクジユツ・桔梗・蜜柑皮・肉桂ニツケイ皮などを調合し、屠蘇袋に入れて酒・みりんに浸して飲む。1年の邪気を払い、齢を延ばすという。日本では平安時代から行われる。屠蘇延命散エンメイサン。
 ②屠蘇散を入れた酒・みりん。正月の祝儀として飲む。  新年
吶喊とっかん (まず息をとめ、次いで爆発的に大声をあげる意) 大勢が一時にわめきさけぶこと。鬨トキの声を挙げること。


咄嗟とっさ

 ①舌うちして嘆くこと。また、息をはくこと。
 ②ちょっとの間。たちどころ。瞬間。易林本節用集「―、即時出来之義」。「―の間」「―の機転」「―に身をかわす」


頓首とんしゅ

 ①中国の礼式で、頭で地を叩き、また頭を地につけて敬意を表すこと。もと対等の礼に行い、後に君主に対して行なった。
 ②書簡文・上書文などの終尾に書いて敬意を表す語。「―再拝」


緞子どんす

 (唐音) 紋織物の一種。生糸、また経タテ緯ヨコ異色の練糸を用いた繻子シユスの表裏組織を用いて文様を織り出した絹織物。  室町時代に中国から輸入されたという。


緞帳どんちょう

 ①厚地織物で製したとばり。
 ②刺繍シシユウや宝石類で絢爛ケンランとした図案をほどこした布。
 ③芝居・劇場などで使う、上に竿があって巻きあげ巻きおろす幕。
 ④緞帳芝居・緞帳役者の略。
  
就中なかんずく (ナカニツクの音便。漢文訓読に由来する) その中で。とりわけて。特に。平家物語2「―御出家の御身なり」。「―この点が重要だ」
馴染なじみ ①なれ親しむこと。なれ親しんだこと。また、そのもの。平治物語「年来の御―に、…なき御跡を問ひ奉らむ」。「お―の店」
 ②長年連れそった夫または妻。好色一代男2「―に別れての当座は」
 ③同じ遊女のもとに通い馴れた客。吉原では、3度目以降の客をいう。


何卒なにとぞ

 ①何とかして。どうにかして。狂、枕物狂「相談致し―ならう事ならばかなへて進ぜうと存ずる」
 ②相手に強く願う気持を表す語。どうか。どうぞ。ぜひ。「―よろしく」


奈落ならく

 (梵語 naraka)
 ①地獄。「―の苦しみ」
 ②物事のどんぞこ。最後のどんづまり。奈落の底。
 ③劇場で、花道の下や舞台の床下の地下室。回り舞台やせり出しの装置がある。


生業なりわい

 生活のためのしごと。なりわい。すぎわい。「―に励む」


南面なんめん

 ①南方に向くこと。また、南向き。
 ②(昔、中国で君主は南に面して座したことから) 君主の位に即くこと。天子となって国内を治めること。


忍辱にんにく

 〔仏〕六波羅蜜ロクハラミツの一。もろもろの侮辱・迫害を忍受して恨まないこと。宇津保物語俊蔭「しかあれば―の心を思ふともがらにあらず」


禰宜ねぎ

 (「祈ネぐ」の連用形から)
 ①神主の下、祝ハフリの上に位する神職。伊勢神宮では、少宮司の次、宮掌の上位。宮司の命を受け祭祀に奉仕し、事務をつかさどった。
 ②イナゴの異称。


捏造ねつぞう

 (デツゾウの慣用読み) 事実でない事を事実のようにこしらえて言うこと。「証拠を―する」「―記事」


涅槃ねはん

 〔仏〕(梵語 nirv  a ニルヴァーナ  吹き消すこと、消滅の意)
 ①煩悩ボンノウを断じて絶対的な静寂に達した状態。仏教における理想の境地。般涅槃。滅度。寂滅。泥 ナイオン。
 ②(無余涅槃の意から) 仏陀または聖者の死。入寂。入滅。


嚢中のうちゅう

 ①ふくろのなか。
 ②財布の中。所持金。「―一物イチモツもなし」


熨斗のし

 ①火熨斗ヒノシの略。今昔物語集26「海の面は―の尻のやうにて波もさぶらはぬに」
 ②「のしあわび」の略。
 ③方形の色紙を細長く、上が広く下の狭い六角形に折り畳み、その中に熨斗鮑ノシアワビ(後には紙で代用)を小さく切って張り、進物に添えるもの。


野点のだて

 野外で茶をたてること。また、その茶の湯。


長閑のどか

 ①のんびりと、おちついて静かなさま。ゆっくりと、あわてないさま。源氏物語花宴「―に袖かへすところを」。「―な休日」
 ②気にかからないさま。心配のないさま。源氏物語帚木「いと―に想ひなされて」
 ③天気がよくて穏やかなさま。  春 。宇津保物語楼上下「日―に」


暖簾のれん

 ①軒先に張って日よけとする布。もと禅家で冬季の隙間風を防ぐのに用いた垂れ幕。江戸時代以降、商家では屋号などを染め抜いて商業用とした。日葡辞書「ノレンヲカクル」。「―をくぐる」「縄―」
 ②暖簾名の略。
 ③一般に、部屋の仕切りに垂れる短い布。
 ④店の格式や信用。「―を傷つける」「―にかかわる」
 ⑤老舗シニセとしての多年の営業から生ずる無形の経済的利益。仕入れ先・得意先・営業上の秘訣など。


惚気のろけ

 のろけること。また、のろけ話。


狼煙のろし

 ①火急の際の合図に、薪を焚き、または筒に火薬を込めて上げる煙。とぶひ。〈運歩色葉〉
 ②(比喩的に) 一つの大きなことを起すきっかけとなる目立った行動。「革命の―を上げる」
 ③昼間あげる花火。


暢気のんき

 (正しくは暖気、ノンは「暖」の唐音。「呑気」「暢気」は当て字)
 ①気晴らし。気散じ。〈日葡〉
 ②気分や性格がのんびりしていること。心配性シヨウでないこと。「―に構える」「―な人」


悖逆はいぎゃく

 (「悖」は、もとる意) 道理にさからいそむくこと。むほん。


黴菌ばいきん

 ①黴カビや細菌などの有害な微生物の俗称。「―が入る」
 ②転じて、有害なもの。「社会の―」


焙煎ばいせん

 (コーヒーの豆を)火熱で煎イること。


白皙はくせき

 皮膚の色が白いこと。「長身―」


漠然ばくぜん

 ぼんやりして、はっきりとしないさま。とりとめのないさま。「―とした不安」「―たる印象」


暴露ばくろ

 ①風・雨にさらされること。
 ②さらけだすこと。むきだしにすること。悪事・秘密などがあらわれること。露見。「秘密を―する」「旧悪が―する」


刷毛はけ

 ①獣毛などをたばねて木製の柄に植え、端を切り揃えたもの。糊・漆・塗料などを塗るのに用いる。刷子。〈和名抄15〉
 ②髻モトドリの先端。はけさき。


跛行はこう

 ①びっこをひいて行くこと。
 ②釣合のとれないこと。順調でないこと。「―景気」


梯子はしご

 ①高い所へ寄せかけて登る道具。2本の長い材に、幾段もの横木を取り付けて足掛りとしたもの。かけはし。「―をかける」
 ②階段。だんばしご。きざはし。
 ③梯子酒(次々と場所を変えて酒を飲み歩くこと「梯子飲み」とも)の略。
 ④梯子持(消火の時、梯子を持つ役の人)の略。


破綻はたん

 ①やぶれほころびること。
 ②物事が成立しないこと。従来の関係がこわれること。「―を来す」


破竹はちく

 ①竹をわること。
 ②「破竹の勢い」(竹を割るとき、初めの節を割ればあとは容易に割れるところから、はげしくとどめがたい勢い)の略。「―の進撃」


跋扈ばっこ

 [後漢書朱浮伝](「跋」は踏む、「扈」は竹やな。大魚が梁ヤナの中に入らないでおどりこえることから) 上を無視して権勢を自由にすること。  転じて一般に、勝手気ままにふるまうこと。のさばりはびこること。「跳梁―」


玻璃はり

 (梵語spha ika; pha ia)
 ①仏教で、七宝の一。水晶。百座法談聞書抄「―をかけ露をつらぬく点ひとつもかくる事なく」
 ②ガラスの別称。
 ③火山岩中に含まれるガラス状物質。


罵詈ばり

 (「罵」も「詈」も悪口を言う意) ののしること。悪口をあびせること。嘲罵。「―雑言ゾウゴン」


蟠踞ばんきょ

 ①わだかまりうずくまること。
 ②広大な土地を領し勢力を振うこと。


万斛ばんこく

 (「斛」は「石」に同じ) はなはだ多い分量。「―の涙」


煩雑はんざつ

 わずらわしくごたごたすること。「―な手続き」


盤石ばんじゃく

 (バンセキとも)
 ①大きな岩。いわお。「―の重み」
 ②極めて堅固なこと。「―の備え」


反芻はんすう

 ①一度のみこんだ食物を再び口中に戻し、噛み直して再びのみこむこと。典型的にはウシ目(偶蹄類)の哺乳類が行う。
 ②二度三度くりかえし思い、考えること。「師の言葉を―する」


半纏はんてん

 ①羽織に似るが襠マチも襟の折返しもなく、胸紐も付けない衣服。ねんねこ半纏の類。
 ②印シルシ半纏の略。


氾濫はんらん

 ①水のみなぎりあふれること。性霊集2「―として自ら逸ヤスし」
 ②洪水になること。「川が―する」
 ③転じて、(好ましくない)ものがあふれるほどに出回っていること。「悪書の―」


凡例はんれい

 書物のはじめに掲げる、その書物の編集方針や利用のしかたなどに関する箇条書。例言。


贔屓ひいき

 (ヒキの転)
 ①気に入った者に特別に目をかけ、力を添えて助けること。後援すること。「先生に―される」「―の店」
 ②後援者。パトロン。「―筋」


彼岸ひがん

 ①河の向う岸。生死の海を渡って到達する終局・理想・悟りの世界。涅槃ネハン。 此岸シガン。
 ②彼岸会の略。
 ③春分・秋分の日を中日として、その前後7日間。俳諧では特に春の彼岸をいう。


卑近ひきん

 てぢかでたやすいこと。ありふれたこと。高尚でないこと。「―な例を示せば」


鼻腔びこう

 鼻の内腔。気道の始端部に当り、嗅覚器がある。肺に流入する空気を温め、同時に適当な湿度を与える。医学ではビクウという


批准ひじゅん

 ①臣下の奏上する文書・事柄に対し、君主が可否を決して裁許すること。
 ②〔法〕(ratification) 全権委員が署名した条約を、当該国家において憲法上条約締結権限を与えられた者が確認し同意すること。


只管ひたすら

 ①ただそればかり。ひとむき。いちず。ひたぶる。切に。源氏物語夕顔「―袖の朽ちにけるかな」。
  徒然草「―世をむさぼる心のみ深く」。「―前進する」「―な努力」
 ②程度が完全なさま。すっかり。まったく。源氏物語槿「女御・更衣、あるは―亡くなり給ひ」。増鏡「かの維時が名残は―に民となりて」


畢竟ひっきょう

 (「畢」も「竟」も終る意) つまるところ。つまり。所詮。結局。狂、布施無経フセナイキヨウ「―此の御布施がほしさの儘じや」


必至ひっし

 ①必ずその事の来ること。必ずそうなること。必然。「開戦は―の情勢だ」
 ②(必死ともかく。)将棋で、守りの受け手を打っても詰ツミとなるような形。しばり手。


匹敵ひってき

 ①相手としてちょうど同じくらいであること。「実力は彼に―する」
 ②対等の相手。
 ③つれあい。配偶。


一ひと入しお

 ひときわ。一層。一段。風雅和歌集賀「―まさる春のめぐみは」。「感慨も―である」


疲弊ひへい

 ①つかれよわること。「心身の―」
 ②経済的に窮乏すること。「農村が―する」


誹謗ひぼう

 (古くはヒホウ) そしること。悪口を言うこと。「他人を―する」「―中傷」


瀰漫びまん

 (気分や風潮が)一面にみなぎること。ひろがりはびこること。「沈滞の空気が―する」


剽悍ひょうかん

 すばやくて強いこと。荒々しく強いこと。「―な動き」


剽軽ひょうきん

 気軽明朗であって滑稽なこと。おどけ。「―者モノ」


剽窃ひょうせつ

 (「剽」は、かすめとる意) 他人の詩歌・文章などの文句または説をぬすみ取って、自分のものとして発表すること。「他人の論文を―する」


平仄ひょうそく

 ①平と仄。平字と仄字。また、漢詩作法における平字・仄字の韻律に基づく排列のきまり。
 ②つじつま。条理。


豹変ひょうへん

 [易経革卦「君子豹変、小人革面」](豹の毛が抜け変って、その斑文が鮮やかになることから)
 君子が過ちを改めると面目を一新すること。また、自分の言動を明らかに一変させること。今は、悪い方に変るのをいうことが多い。


標榜ひょうぼう

 ①人の善行を賞揚してその事実をしるし、里門に掲げて衆人に示すこと。
 ②主義・主張などを公然と掲げあらわすこと。「フェミニストを―する男」


糜爛びらん

 ただれること。転じて、国の乱れることをたとえていう。


披瀝ひれき

 (披ヒラき瀝ソソぐ意) 心中の考えを包むことなくうちあけること。「真情を―する」


尾籠びろう

 (「おこ(痴)」の当て字「尾籠」の音読)
 ①礼を失すること。不作法。無礼。不敬。平家物語1「殿の御出ギヨシユツに参り逢うて、のりものよりおり候はぬこそ―に候へ」
 ②きたなく、けがらわしくて、人前で失礼に当ること。浮世風呂前「食べると、―ながら吐きまする」。「―な話」


顰蹙ひんしゅく

 (不快に思って)顔をしかめること。まゆをひそめること。「居合せた者を―させる」


頻繁ひんぱん

 しきりであること。ひっきりなしに行われること。「―に催促する」


風韻ふういん

 おもむきのあること。雅致。風趣。風致。


瘋癲ふうてん

 ①精神状態が正常でないこと。また、そういう人。癲狂。
 ②定まった仕事も持たず、ぶらぶらしている人。


風籟ふうらい

 風が物に当って発する音。風の声。風の音。


敷衍ふえん

 ①のべひろげること。ひきのばすこと。展開。
 ②意義を広くおしひろげて説明すること。わかりやすく言い替えたり詳しく説明したりすること。「―して言えば」


俯瞰ふかん

 高い所から見おろすこと。全体を上から見ること。


俯仰ふぎょう

 ①下を向くことと上をあおぐこと。
 ②転じて、起居動作。


馥郁ふくいく

 よい香のただようさま。「―たる香」


腹背ふくはい

 ①はらとせ。前面と背面。まえうしろ。「―に敵を受ける」
 ②心の中で背くこと。「面従―」


服膺ふくよう

 (「膺」は胸の意) 心にとどめて忘れないこと。胸にとめて常に行うこと。「拳々ケンケン―する」


普請ふしん

 (シンは唐音)
 ①〔仏〕禅寺で、大衆ダイシユを集めること。また、あまねく大衆に請うて堂塔の建築などの労役に従事してもらうこと。
 太平記36「相模守―の為とて、天竜寺へ参りけるが」
  ②転じて一般に、建築・土木の工事。「雨漏りする屋根を―する」「道―ミチブシン」「安―」


風情ふぜい

 ①おもむき。あじわい。情趣。方丈記「岡の屋に行きかふ船を眺めて、満沙弥が―をぬすみ」。「―のある住まい」
 ②表情。容姿。様子。日葡辞書「イカリノフゼイヲアラワス」。「もの悲しげな―」
 ③…のような具合。天草本伊曾保物語「鳩どもが群がり居る所に鳶が来て掴み殺さうとの―ぢやによつて」
 ④能楽で、(おもむきのある)所作。風姿花伝「為手シテの言葉にも―にもかからざらん所には、肝要の言葉をば載すべからず」
 ⑤(接尾語的に) …のようなもの、似通ったものの意を表す。徒然草「箱―の物にしたため入れて」
 ⑥(接尾語的に) 他を卑しめ、または自らへりくだる意を表す。「町人―」「わたしら―」


扶持ふち

 ①たすけること。平家物語1「忠仁公幼主を―し給へり」
 ②俸禄を給して、家臣としておくこと。また、その俸禄。主として米(扶持米)を給与した。太平記16「死残りたる一族若党どもを―し置き」


払暁ふつぎょう

 明けがた。あかつき。「―の勤行」


払拭ふっしょく

 はらいぬぐうこと。すっかり取り除くこと。「古くさいイメージを―する」


蒲団ふとん

 ①蒲ガマの葉で編み、坐禅などに用いる円座。ほたん。正法眼蔵坐禅儀「坐禅のとき、袈裟ケサをかくべし。―をしくべし」
 ②(「布団」は当て字) 綿・藁ワラまたはパンヤ・羽毛などを布地でくるみ、座りまたは寝る時に敷いたり掛けたりするもの。「―を敷く」


無聊ぶりょう

 ①心配事があって楽しくないこと。新花つみ「―の事なりとて、ひたすら避してうけざりけり」
 ②つれづれなこと。たいくつ。「―を慰める」「―な日々」


振舞ふるまい

 ①ふるまうこと。おこない。挙動。特に、人目につくような行動。源氏物語帚木「人目しげからんところに、びんなき―やあらはれん」。
 「不埒フラチな―」「立居―」
 ②もてなし。馳走。饗応。


刎頸ふんけい

 くびをはねること。首を斬ること。
 刎頸の友[史記廉頗藺相如伝]その友人のためなら、たとえ、くびを斬られても後悔しないほどの真実の交友。生死を共にする親しい交際。


噴飯ふんぱん

 おかしくてたまらず、口の中の飯をふき出すこと。ふきだして笑うこと。「―もの」


憤懣ふんまん

 いきどおりもだえること。発散できずに、心中にわだかまる怒り。「―やる方ない」「―をぶちまける」


平衡へいこう

 ①天秤テンビンの両皿にのせた物体と錘オモリとの重さが相等しく、さおが水平の位置をとること。つりあいがとれること。
 ②いくつかの力が同時に、ある物体に作用して、その結果物体が静止状態を保つこと。力の釣合。
 ③一般に、いくつかの物質から成る系の間で、物質・電荷・エネルギーなどの授受がおこらない状態。


閉口へいこう

 ①口を閉じて、ものを言わないこと。太平記24「されども大儀なれば満座―の処に」
 ②言い負かされたり圧倒されたりして、返答につまること。屈服すること。天草本伊曾保物語「とかく論ずるに及ばいで―して畏つたが」
 ③相手の出方やその時の状況などのために、手の打ちようもなく困らされること。どうにも参ること。「一ヵ月の断水には―した」「彼には―だ」


辟易へきえき

 (「辟」は避ける、「易」は変える意)
 ①驚き怖れて立ち退くこと。
 ②勢いに押されてしりごみすること。たじろぐこと。太平記14「その勢ひに―して河よりむかひへ引退き」。「すごい剣幕に―する」
 ③閉口すること。東海道中膝栗毛5「裸にされてはたまらぬと大きに―し」。「くどい説教に―する」


劈頭へきとう

 (「劈」は裂ける意) まっさき。事の一番はじめ。「会の―から荒れる」「開巻―」


舳先へさき

 (船首の意の古語ヘに、サキをつけた重言) 船首。みよし。 艫トモ


鼈甲べっこう

 ①亀類の甲。特に、スッポンの甲。古くは薬用。
 ②玳瑁タイマイの甲。櫛クシ・笄コウガイや眼鏡の縁などに細工。


蔑視べっし

 さげすむこと。見さげること。「―に耐える」「ほら吹きを―する」


別嬪べっぴん

 とりわけ美しい女。美人。「―さん」


偏在へんざい

 かたよって存在すること。ある場所にかたよってあること。「富が―する」


遍在へんざい

 広くあちらこちらにゆきわたってあること。「石仏は全国に―する」


編纂へんさん

 諸種の材料を集め、またはそれに手を加え、書籍の内容をつくりあげること。編集。「県史を―する」「辞典の―」


偏執へんしゅう

 (ヘンシツとも) かたよった見解を固執して他人の言説をうけつけないこと。偏屈。片意地。


編綴へんてつ

 つづり合せること。文章などをまとめつづること。


便佞べんねい

 口さきが巧みで人の気に入るようにたちまわり、心のねじけていること。


勉励べんれい

 つとめはげむこと。「職務に―する」「刻苦―」


萌芽ほうが

 ①芽のもえ出ること。また、その芽。めばえ。
 ②物事の始まり。きざし。「近代文明の―」


咆哮ほうこう

 たけりさけぶこと。獣などのほえたけること。また、その声。咆号。「虎の―」


彷徨ほうこう

 さまようこと。うろつくこと。


放恣ほうし

 わがままでしまりのないこと。「―に流れる」「―な生活」


芳醇ほうじゅん

 酒のかおり高く味のよいこと。また、その酒。「―なワイン」


烹炊ほうすい

 にることと炊タくこと。


紡錘ぼうすい

 糸をつむぐ錘ツム。


滂沱ぼうだ

 ①雨のはげしく降るさま。明月記「雨漸く―」
 ②涙のとめどなく流れ出るさま。「涙―として流る」


逢着ほうちゃく

 でくわすこと。「難問に―する」


鵬程ほうてい

 (鵬オオトリの飛んで行く道程の意) 遠い道程。


放鷹ほうよう

 たかがり。鷹野タカノ。


放埒ほうらつ

 (馬が埒ラチをはなれる意)
 ①気ままにふるまうこと。徒然草「道の掟正しく、これを重くして―せざれば」。「―な若者」
 ②酒色にふけり、素行がおさまらないこと。浄、女殺油地獄「与兵衛に指さす身の―」。「―な生活」


琺瑯ほうろう

 (enamel) 金属の素地、おもに鉄器などに、うわぐすりを塗って焼き、ガラス質に変えて、これで表面をおおったもの。  防錆・装飾などを目的とする。うわぐすりの成分は珪石・長石・硼砂・粘土・蛍石・酸化錫・炭酸ナトリウムなど。  装飾品では七宝シツポウ焼がある。琺瑯引。瀬戸引。エナメル引。


朴訥ぼくとつ

 [論語子路「子曰、剛毅木訥近仁」]質朴で無口なこと。無骨で飾りけのないこと。「―な青年」


反古ほご

 ①書画などを書き損じた不用の紙。ほぐ。ほうご。
 ②転じて、役に立たない物事。


匍匐ほふく

 ①はらばうこと。はうこと。地に伏して手と足とではうこと。「―前進」
 ②膝行して進退する礼。天武紀下「跪礼・―礼並びに止めよ」
 ③〔理〕クリープに同じ。


襤褸ぼろ

 ①使い古して破れなどした、役に立たない布。ぼろきれ。
 ②着古して破れた着物。つづれ。「―をまとう」
 ③使い古して壊れているもの、役に立たなくなったもの。「―靴」「―の自転車」
 ④隠している欠点・短所。また、失敗。「―を出す」「―を隠す」


奔放ほんぽう

 伝統や慣習にとらわれず、思うままにふるまうこと。「―に生きる」


邁進まいしん

 勇み立ってひたすら進むこと。「勇往―」


満腔まんこう

 満身。からだ全部。まんくう。「―の敬意を表する」


蹣跚まんさん

 足もとがよろめいて、ひょろひょろと歩くさま。「酔歩―」


瞞着まんちゃく

 あざむくこと。ごまかすこと。人の目をくらますこと。「世人を―する」


神輿みこし

 神幸の際、神体または御霊代ミタマシロが乗るとされる輿。形状は四角形・六角形・八角形などで、多くは木製黒漆、金銅金具付。 屋蓋の中央には鳳凰または葱花ソウカを置き、台には2本の棒を縦に貫いて轅ナガエとし、舁カく便に供する。おみこし。しんよ。


微塵みじん

 ①こまかい塵。日本霊異記下「九間の大堂仆るること―の如く」
 ②極めてこまかいこと。ごくわずかなこと。また、そのもの。「―の同情心もない」
 ③微塵縞ミジンジマの略。


鳩尾みぞおち

 (ミズオチの訛) 胸骨の下の方、胸の中央前面のくぼんだ所。みずおち。むなもと。


晦日みそか

 月の第30番目の日。転じて、月の末日をいう。尽日ジンジツ。つごもり。


冥利みょうり

 ①〔仏〕善業ゼンゴウの報いとして得た利益。
 ②神仏が知らず知らずのうちに与える恩恵。冥加の利益リヤク。
 ③ある立場・境遇でしぜんに受ける恩恵や幸福。浄、百合若大臣野守鏡「常の人のいはぬことかごかき―にかなふた」。「商売―」
 ④誓いの詞。反すれば冥利を失うのも差し支えないの意。浄、博多小女郎波枕「男―商―虚言ござらぬ」


無為むい

 ①自然のままで作為のないこと。老子で、道のあり方をいう。ぶい。平家物語5「尭舜―の化をうたひ」
 ②〔仏〕因縁によって生成されたものでないもの。生滅変化を離れた永遠の存在。特に、仏の涅槃、また、仏法者の生活、  仏門を意味する。今昔物語集1「永く―を得て解脱の岸に至れり」。謡、高野物狂「此の身を捨てて―に入らば」 有為ウイ。
 ③何もしないでぶらぶらしていること。「―無策」「―に過ごす」


無惨むざん 無慚・無慙・無残・無惨
  ①〔仏〕罪を犯しながら、みずから心に恥じないこと。源氏物語手習「我―の法師にて忌む事の中に破る戒は多からめど」。「破戒―」"
 ②残酷なこと。保元物語(金刀比羅本)「悶絶 地ビヤクジして絶え入りけるこそ―なれ」。「―にも斬り殺す」
 ③いたわしいこと。ふびんなこと。平家物語1「泣く泣く又出で立ちける心の内こそ―なれ」。「―な最期」


虫酸むしず

 溜飲リユウインの気味で、胸のむかむかしたとき、口中に逆出する胃内の酸敗液。「虫唾」とも書く。


夢寐むび

 ねむって夢をみること。ねむること。また、ねむっている間。「―にも忘れぬ」


無謬むびゅう

 理論・判断などに、誤りがないこと。「―性」


酩酊めいてい

 ひどく酒に酔うこと。「すっかり―した」「―状態」


明哲めいてつ

 聡明で事理に通じていること。また、その人。


鍍金めっき

 ①金属の薄層を他の物(主として金属)の表面にかぶせること。また、その方法を用いたもの。
 装飾・防食・表面硬化、電気伝導性の付与、磁気的性質・潤滑性・接着性の改善などのために施す。
 電気鍍金法・溶融鍍金法・真空鍍金法(蒸着)などがある。ときん。〈天正十八年刊本節用集〉
 ②中身の悪さを隠して、外面だけを飾りつくろうこと。


眩暈めまい

 目がまわること。目がくらむこと。げんうん。謡、卒都婆小町「あら苦し―や、胸苦しやと」。「―がする」


面子めんつ

 中国語ちゅうごくご

①面目。体面。「―にかかわる」    

②マージャンの競技者。「―がそろう」


濛気もうき

 ①濛々と立ちこめる気。
 ②気のふさがること。病気。日葡辞書「ゴモウキデゴザル」


猛禽もうきん

 性質が荒い肉食の鳥。猛鳥。


蒙昧もうまい

 知識が開けず、物事の道理に昧クラいこと。日葡辞書「グチ(愚痴)モウマイ」。「無知―」


朦朧もうろう

 ①おぼろなさま。かすんで暗いさま。
 ②物事の不分明なさま。「―とした人影」
 ③意識が確かでないさま。「頭が―とする」


猛者もさ

 勇猛で荒々しい人。体力・技術にすぐれている人。もうざ。


両刃もろは

 両側に刃のあること。また、その刃物。りょうば。⇔片刃


薬籠やくろう

 くすりばこ。一遍上人語録「国師、手巾―を付属して」。「自家―中の物」


扼腕やくわん

 憤慨したり残念がったりして、自分で自分の腕を強く握りしめること。「切歯―」


揶揄やゆ

 からかうこと。からかい。「―嘲弄する」


結納ゆいのう

 (「言納イイイレ」を「結納ユイイレ」と訛り、さらに「納イレ」をノウと音読したもの) 婚約の証として、
 婿・嫁双方からの金銭や織物・酒肴などの品物を取りかわすこと。また、その金品。納采。ゆいれ。「―をかわす」「―金」


憂鬱ゆううつ

 気がはればれしないこと。気がふさぐこと。「―な日」


所以ゆえん

 故ニナリの音便形ユヱンナリに起る語) 理由。わけ。いわれ。文明本節用集「時既にくれぬ。
 しかるに道興らず、憂嘆する―なり」。「そこが彼が愛妻家と言われる―だ」


強請ゆすり おどして金品をまき上げること。また、そういう人。浮、好色盛衰記「今時花ハヤる―といふ仕かけなるに」


努々ゆめゆめ

 ①必ず必ず。きっときっと。決して決して。源氏物語槿「もらし給ふなよ―」。「―疑うことなかれ」
 ②つとめて。精出して。今昔物語集12「汝なほ―仏を念じ奉り、法花経を受持・読誦し奉るべし」
 ③少しも。更々。ゆめにも。更に。平家物語11「別の意趣思ひ奉ること―候はず」


膺懲ようちょう

 うちこらすこと。征伐してこらすこと。「―の鉄槌テツツイを下す」


遥拝ようはい

 はるかに遠い所からおがむこと。「―所」


揺籃ようらん

 赤ん坊を入れ、ゆり動かすかご。ゆりかご。


沃野よくや

 地味の肥えた平地。「緑の―」


余燼よじん

 ①もえさし。もえのこり。「―がくすぶる」
 ②比喩的に、事件などが一応片づいたあとでも、なお部分的に残っているもの。「興奮の―がさめやらない」


寄席よせ

 落語・講談・浄瑠璃・浪花節・手品・音曲など大衆演芸の興行場。元禄年間に江戸で始まる。ひとよせせき。よせば。せき。席亭。


輿望よぼう

 世間の人々からかけられている期待。衆望。「―をになう」


埒外らちがい

 ①埒のそとがわ。
 ②物事の一定の範囲外。「常識の―」


喇叭らっぱ

 ①㋐金管楽器(信号喇叭・トランペット・ホルンなど)の総称。真鍮管の一端に吹口をつけ、他端の広く開いたもの。
  ㋑金管楽器の一。無弁で簡単な倍音数個だけを発し、信号・行進の際などに用いる。信号喇叭。軍隊喇叭。
 ②朝顔型の拡声器。ホーン。
 ③「らっぱのみ」(びん詰の液体を、らっぱを吹くように、びんのまま口につけて飲むこと)の略。


螺鈿らでん 鸚鵡貝オウムガイ・夜光貝・鮑貝アワビガイ・蝶貝などの真珠光を放つ部分をとって薄片とし、種々の形に切って漆器あるいは木地などの面にはめ込んで装飾とするもの。紫緑色を帯びて美麗。一般に薄貝を用いたものを青貝といい、  厚貝を用いたものを螺鈿という。また貝殻で飾ることを貝摺カイスリともいう。日本では奈良・平安時代に盛行。摺貝。  大鏡後一条院「―の筥にいれたるに」


濫觴らんしょう

 [荀子子道「其源可以濫觴」](長江も水源にさかのぼれば、觴サカズキを濫ウカべるほどの、または觴に濫アフれるほどの 小さな流れである意) 物の始まり。物事の起原。おこり。もと。「近代医学の―」


濫費らんぴ

 みだりについやすこと。むだづかい。「予算の―」


慄然りつぜん

 恐ろしさにおののきふるえるさま。「惨状に―とする」


溜飲りゅういん

 胃の具合が悪く、酸性のおくびを生ずること。むなやけ。浮世風呂前「五十韻百韻などとくると、―で又わざをなすて」


流暢りゅうちょう

 言葉づかいがすらすらとしてよどみのないこと。「―に英語を話す」


流涕りゅうてい

 なみだを流すこと。落涙。


梁上りょうじょう

 うつばりの上


綸言りんげん

 [礼記緇衣](「綸」は太い糸の意。天子の言はそのもとは糸のように細いが、これを下に達する時は綸のように太くなる意)
 君主が下に対して言うことば。みことのり。


吝嗇りんしょく

 過度にものおしみすること。けち。「―家」


輪廻りんね

 ①〔仏〕(梵語 sa s ra 流れる意) 車輪が回転してきわまりないように、衆生が三界六道に迷いの生死を重ねてとどまることのないこと。   迷いの世界を生きかわり死にかわること。流転ルテン。輪転。宇津保物語俊蔭「―しつる一人が腹に八生宿り」。   「―生死シヨウジ」「―転生テンシヨウ」 涅槃ネハン。
 ②同じことを繰り返すこと。どうどうめぐり。日葡辞書「リンエシタコトヲイウ」
 ③執着心の深いこと。浄、出世景清「―したる女かな」
 ④和歌の回文カイブン。
 ⑤連歌・俳諧で、相連接する3句の第3句が第1句と近似した語句・趣向などを繰り返すこと。付合ツケアイ上、最も嫌うべき禁制事項。


凛々りんりん

 ①寒さの身にしむさま。「―たる寒気」
 ②勇ましいさま。りりしいさま。凜乎。凜然。「勇気―」


流謫るたく

 罪によって遠方に流されること。りゅうたく。「―の身」


坩堝るつぼ

 ①物質を溶融し、または灼熱するための耐火性の深皿。化学実験では白色磁器製のものが普通だが、特殊なものは白金・石英・アルミナなどで作る。
 ②(坩堝の中が灼熱の状態であることから) 興奮・熱狂の場のたとえ。「場内は興奮の―と化した」
 ③種々のものが入りまじった状態のたとえ。「人種の―」


流布るふ

 世に広まること。広く知れ渡ること。「よくないうわさが―する」


瑠璃るり

 ①(梵語 vai  rya の音写「吠瑠璃」の略) 七宝の一。青色の宝石。紺瑠璃。源氏物語梅ヶ枝「沈ジンの箱に―の坏ツキ二つすゑて」
 ②ガラスの古名。
 ③〔動〕オオルリとコルリの総称。
 ④瑠璃色の略。


縷々るる

 ①細く絶えずに続くさま。「山中に―として続く獣道」
 ②こまごまと述べるさま。「―申し述べる」


囹圄れいご

 罪人を捕えて閉じこめておく所。ろうや。ひとや。獄舎。


黎明れいめい

 ①あけがた。よあけ。
 ②比喩的に、新しい時代・文化・芸術など、物事の始まり。「近代日本の―を告げる」


玲瓏れいろう

 ①金属や玉などが美しいさえた音をたてるさま。また、音声の澄んで響くさま。「―として響く鈴の音」「―たる美声」
 ②玉などが透き通り曇りのないさま。
 ③うるわしく照りかがやくさま。「八面―たる富士の山」


瀝青れきせい

 bitumen) (本来は天然アスファルトの意) 天然に産する固体・半固体・液体または気体の炭化水素類に対する一般名。
 主なものは、固体のアスファルト、液体の石油、気体の天然ガスなど。ビチューメン。


廉節れんせつ

 清廉で正直セイチヨクな節操。


輦輿れんよ

 輦車と輿コシ。貴人ののりもの。


聾唖ろうあ

 耳が聞えないことと言語を発声できないこと。聴覚欠如の結果、音声言語習得不能または既習言語忘却によって口もきけなくなった状態。


漏洩ろうえい (ロウセツの慣用読み)
 ①水などがもれること。水などをもらすこと。
 ②密事などがもれること。秘密をもらすこと。「機密―」


壟断ろうだん

 ①断ち切ったように高くそびえたところ。丘。
 ②[孟子公孫丑下](ある男が市が立つたびに高い所を探して上り、市場を見渡して安いものを買い占め高い値で売りつけて、 市場の利益を独占した故事から) うまく利益を独占すること。ひとりじめ。


漏斗ろうと

 ①「じょうご」((上戸ジヨウゴの意で、酒を吸い込むからという。また「承壺シヨウコ」の音ともいう) 形状が朝顔の花に似、その筒口を瓶・徳利・壺などの口にはめ、上部から酒・醤油・油などの液体を注ぎ入れるのに用いる器具。また、大型で、穀類・茶などを移すのに用いるものもある。ろうと。)に同じ。
 ②イカ・タコなどの頭足類にある に似た構造物。ここから水・墨汁を噴出し、また卵・精子を放出する。


狼狽ろうばい

 (「狽」は狼の一種。一説に、狼は前足が長く後足は短いが、狽はその逆。両者は常に共に行動し、離れると倒れて、 うろたえることから) あわてふためくこと。うろたえ騒ぐこと。「―の色を隠せない」「周章―」


緑青ろくしょう

 銅の表面に生ずる緑色の錆サビ。空気中の水分と二酸化炭素が作用して生じ、その組成は塩基性炭酸銅など。  有毒とされてきたが、ほとんど無害。緑色顔料に供する。銅青。石緑。


轆轤ろくろ

 ①回転運動をする器械。手動式・電動式がある。
  ㋐重い物を引いたり上げたりする装置。移動させようとする物体にかけた縄を軸棒にまといつけ、
    軸を回転して縄を巻くことによって引っ張る。まんりき。しゃち。かぐらさん。
  ㋑木地細工などで円い挽き物を作る工具。綱や革紐をまとった軸を横に設け、その端に取り付けた鉄製の爪に、
    荒挽きした材料の木地を固定し、軸を回転させながら轆轤鉋ロクロガナで木地をえぐりけずる。〈和名抄15〉  
  ㋒轆轤台のこと。
  ㋓車井戸の、縄をかけてつるべを上下させる滑車。
 ②傘の柄の上端に付けて、傘を開閉する仕掛け。


猥褻わいせつ

 男女の性に関する事柄を健全な社会風俗に反する態度・方法で取り扱うこと。性的にいやらしく、みだらなこと。「―な行為


輪中わじゅう

 水災を防ぐため1個もしくは数個の村落を堤防で囲み、水防協同体を形成したもの。
 岐阜県南部の木曾・長良・揖斐イビ3川の下流平野に形成されたものは有名。


藁蕊わらしべ

 稲の穂の芯シン。また、わらくず。わらみご。わらすべ。